第367話:シィグ~機械の体を失って~
戦死したと思ったら、異世界で生まれ直していた。
それだけでも驚いたのだが、もっと驚いたのが、生身の体で生まれ直したということだ。
俺は戦争で体の一部を失いサイボーグ化していた。
それを何度も繰り返していて、失った部位を補うようにだけサイボーグ化していったのだが、気づいたら全身サイボーグになっていた。
戦果も結構挙げていて、敵からも味方からもバケモノ扱いされていた。
そうなって結構長い時間を過ごし戦ってきたが、遂に脳を破壊され戦死したというわけだ。
そして、気づいたら子供の頃の姿、生身の体でこの世界の説明を受けていた。
「以上で説明を終わりますが、何か質問は?」
「ない、大丈夫だ」
「では、死後の生活をお楽しみください」
「ああ」
一通りの説明を受けて俺は自由にされた。
「どうするかな」
声に出して行動確認をするのは重要だ。
それは戦場での話だが、癖になってしまっていて不意に声を出してしまう。
そして、自分の声、ひどく懐かしい、記憶の遠くの果てに微かに残る生身だったころの声に驚く。
そうだ、俺の声はこんな声だったんだ。
「まずは、生身の体に慣れないとな」
変声期前の、やけに高い声を気にしつつ、独り言で行動の方針を決めた。
まずは、身体運用。
適当な空き地で体の動かし方を確認する。
子どもの体になってしまったこともあるが、生身の体は貧弱すぎる。
手足の駆動出力、いや筋力か、が足りずに思ったように走れない。
転ぶようなことはないが、無駄に脚が空を掻くのを感じる。
速度も出ない。
歩くだけでも無駄に脚が上がる、踏み降ろしも力強すぎる。
パワーがあるのではなく、無駄な力が入りすぎているということだ。
スタスタと歩くこともできない、足を地面にドスドスと叩き付けるようにしか歩けない。
ああ、脚をサイボーグ化した時のことを微かに思い出した。
あの時のリハビリにはどれだけの時間を要したんだったか。
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