第357話:スルガ・ヨシダ~混雑混乱~

「うおあー!」

 人が!多い!死ぬ!

 今日はなんだったか、たしかなんかあったはずだ、去年も一昨年も同じようなことがあったはずだ。

 詳細は覚えていなくて、それが今日だったということも忘れていた。

 そしてうっかり外出してしまい、今に至るわけだ。

 人の波に流されて、飲まれて、自由に身動きがとれない。

 だめだな、これはだめだ。

 人の波に逆らって帰ろうとするのは無理だ。やめよう。

 周りの人の動きに合わせて移動する、右に進めば自分も右へ、左へ進めば自分も左、周りが跳ねれば自分も跳ねて大きな地震が発生した。

 たしか前の時もそうやってやり過ごしたんだ。

 自分を殺して、周りに合わせる。

 人の大波の中で身動きしようとするとうっかり死にかねない。



 流されて流されて、気がついたら人の波から外れた建物の軒下に転がっていた。

 ああ助かった、助かったと思ったけど助かってないかもしれない。

 相変わらず人の波は途切れることなく続いている、現在地がいまいちどこかわからないけど、自宅に帰るには人の波が途切れるのを待つか、人の波を泳いで帰るしかない。

 人の波に飛び込むとかあり得ないので、この事態が落ち着くのをこの場所で待つことにした。

 人の波を眺めるだけでも暇しないだろう。

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