第341話:ケブン・リスク~カルベム業務に使うベニンという器具~
「部長、これは?」
「なんだ、知らないのかね? それはベニンだ」
詳しいことはこれを読めと、資料を寄越し、自ら説明するのは面倒だから嫌だという雰囲気を出して、仕事に戻った。
ベニンと言うらしいそれは、これからの仕事に必要なものらしく、形状は取手のような、コの字型の道具だ。
端が平らになっていて接触端子のようになっている、この場所をなにかに当てて使うのだろう、見てわかるのはそれぐらいだ。
そもそお、何の業務に使うのかも説明されていない。
まぁ、読めと言われた資料に書いてあるだろう、と自分の机に戻り、誰の趣味か拘りかで使われている紙を束ねた冊子の資料を開く。
ベニン1つの説明にいったい何ページ使うんだと、これを書いたやつに文句を言いたいぐらい厚い。
とりあえず、もくじ。
やたらと項目が多い。
そんなに説明する項目があるのだろうか、ボタンの1つもなく、接触端子2つしかないのに?
どうせろくなことは書いてないであろう前書きをとばし、操作概要へ進む。
ベニンはカルペム業務を飛躍的に楽に行うことができる画期的デバイスです。
なるほど、カルペム業務をするのに必要な道具なんだな、なるほどなるほど、カルペム業務?
カルペム業務ってなんだ?
手元にある
目の前の説明書のどこかに書いてあるだろうともくじを引く、あった。
該当のページを開いて説明を読む、説明とよりもベニンを使ったカルペム業務のやりかただが、だいたいわかるだろう。
と思っていたのだが、1つの言葉を調べるのに、最低3つの知らない単語を使われ、グローバルネットでのヒット率は1割を切り、紙の冊子ならではの検索性の悪さも合間って、結局なにもわからなかった。
その夜は朝までずっと説明書とにらめっこをしていたのだが、なにもわからず、今日の仕事で何をすればわからないまま、出社、朝礼の発表で信じられないことを聞く。
ベニンを使う業務はなくなったらしい。
ついでにそれはカルペム業務ではなかった。
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