第323話:ヨスガーミドリ~根拠なき肯定~

「この世界ってもしかして作られた世界なんじゃないの」

「きっとそうだよ」


「明日の試験うまくいくかな」

「君なら大丈夫だよ」


携帯端末デバイス落とした」

「きっと見つかるよ」


「この試合で勝てかどうか不安」

「大丈夫、負けないよ」


「世界を滅ぼすスイッチを拾った」

「きっとおもちゃだよ、届けにいこう」


「そうだよ」

「大丈夫」

「問題なし」

「気にしすぎだって」

「そのとおりだよ」

「間違いないね」

「何をそんなに不安がっているんだい?」

「君は正しい」


 ボクは君を肯定する。

 よくも知らずにただひたすらに肯定する。

 ほんとうはうまくいかなかったときのために知らんけどと後に付け足したいが、それでは肯定する意味が薄れてしまうから我慢する。

 昔からそうだ。

 ボクはよくも知らないことに対して肯定する。

 むしろ知っていることなら肯定しない。

 大体知っていることというのは間違っていることを知っていることだからだ。

 そういうときは否定もしないし、肯定もしない。

 そしてあるとき気づいた。

 ボクの無責任な肯定は大抵あっている。

 肯定して正解だったんだ。

 肯定したことに対して後から返ってくる返事は基本的に肯定。

「ありがとう、君の言うとおりだった」

「君が背中を押してくれたおかげで勝てたよ」

「君に肯定してもらったから、私は進むことができた」

 等々、ボクの肯定を肯定する返事はたくさんある。

 そうするうちに、ボクの肯定には信者がついた。

 ボクが肯定するとそれは絶対的に正しくなる、だそうだ。

 なんだそれは、さすがのボクも否定したい。

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