第285話:クロマル=ノキア~シミュレーション仮説~

 この世界は機械仕掛けの夢である、という夢を見た。

 そういえばどこだったかでこんな話を聞いたことがある、とある滅んで消滅した世界Aがある、世界Aが誕生した時の条件すべてを同じにして世界を創造したら起きる現象や歴史、すべてが完全に一致し、最終的には同じように滅びると。

 それを高性能な電算機で演算し、シミュレートすることができると。

 そしてそれは、実際にあった世界の再現だけではなく、条件を設定し一から新たな世界をシミュレートすることも可能で、この世界はそのシミュレートの中であるという話だ。

 当然、シミュレートの中で生活しているヒト達は自分達がシミュレートの中で電算機の演算によって思考していると錯覚させられているデータであるなどと気づかないし、そう考えたとしても憶測、妄想の域をでない。

 つまり、この話を実証するためには自分のいる世界をシミュレートしている上位世界へのアクセスを成功させるなりして現在の世界へどうにかして降臨してもらうしかない。

 つまりは神の存在証明と同じだ。

 いると信じられている(この世界では証明されている)が向こうから存在を証明してくれない限り、いるというのは仮説上のものでしかない。

 そう考えると上位世界の住人も神も似たようなものか。


 話は戻って世界は電算機の中のシミュレーションであるという話。

 ならば世界が多重に存在しているのも不思議な話ではないし、シミュレーションの内容によって魔法の存在や怪物の有無、そのような差がある様々な世界が存在する理由としても十分だ。

 そして、そんなシミュレーション世界においての死の先にあるこの世界、つまりは生物のアーカイブなのではないだろうか。

 本シミュレーション世界で死に、消滅するだけの主観データ一時保存しておく世界、一時保存しておく理由として研究として有用なデータをとれる可能性のある世界のセーブポイントとして利用する、有能な人材だけを集めた特殊シミュレーションへ使用する人格データの選定のための世界、複数世界の混合を目的とした特殊シミュレーション等様々な仮説を挙げることができるが、やはりこれを証明するためにはこの世界をシミュレーションしている最上位世界人がアバターをこの世界に生成するなりして降臨してもらうしかないのだ。

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