第262話:サハラ・ヨミ〜虚無の谷〜

「ここが、報告にあった谷か」

 とある旅人が発見した谷へ調査に来た。

 谷と言っても実際は大地の亀裂で。

 右を見ても左を見てもどこまでも続いており、そもそも対岸も遠すぎる。

 さらに底は見えず、世界の果てと言われても信じられるレベルのものだが、旅人によれば対岸は存在するらしい。

「端は見つかったか?」

 部下の調査員に尋ねる。

「いえ、何万クロン進んでも端は発見できません」

「そうか……」

 調査を初めて3日、進展がない。

 とりあえず谷の全容を把握してみようと谷の端を目指させてみたり、底はどうなってるのかとカメラを投げ込んでみたが、今の報告にあるようにどこまで行っても谷が続いていたり、延々と落ちていることがわかる映像が1日以上続けて送られてきている。

 もしかしたら端も底もないのかもしれない。

 部下の報告を聞き、新たな指示を与え、上へ提出する報告書の文面に頭を悩ませている。

 まったく、なんで私がこんな常世の荒野で、わからないことしかわからないような調査をしなければならないんだ。

 そう、ぐちぐちと言いながら報告書を書いていると、新たな報告が上がってきた。

「谷に落としたカメラの映像が途絶えました!」

 進展が、来た。

「詳しく話せ、ロスト直前の映像も寄越せ」

 そう指示し、目の前のモニターに映像を出させる。

 カメラにつけていたライトが超高速で上に消えていく壁を照らしていたかと思うと、光の反射が確認できなくなり、その次の瞬間にはカメラをロスト。

 映像からは何もわからないと言っても、いいレベルだ。

「映像から落下速度を測定し、ロストした時間から落下距離を算出しろ。常識的な重力加速度などあてにならんからな」

 とりあえず、環境が激変する高さ、いや深さをこれで見つけることができるだろう。

 あとは落下速度に斑があればそれもデータでまとめて、深さが確定したら人を送ってもいいかもしれない。

 その前に、別の実験生物で生物が存在できる環境かを調べる必要があるか。

 ふふふ、楽しく、いや、忙しくなってきたな!

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