第243話:ミスリ・ハープとミスル・ハープⅢ~双子は事件に巻き込まれがち~
「あんたたち、今すぐその手を離しなさい」
パトロールを兼ねた散歩、日課にしているそれの最中に恐喝現場を見つけてしまったら声をかけるしかない。
二人の男が一人の少年に対して詰め寄って金をよこせと言っている。
働かなくても生活もできるし、ある程度のお金ももらえるこんな世界でなぜ恐喝などしているのかは置いておいて、悪は悪、私はそれを見て見ぬふりなんてできない。
例え、私には彼らを腕力で止める力が無いとしても!
「ミス……リか」
私の顔つきを確認してミスルではないことを確認する。
どうやら以前ミスルに酷い目にあわされたことがあるようだ。
「ミスルの方はいないのか?」
恐喝の片方が辺りを見回しながら聞いてくる、よほどミスルを警戒しているようだ。
しかしここにいるのは
「私一人よ!」
大きな声で宣言する。
恐喝の二人は突然の大声にびくりとしたが、隙は見せない。
私に注目を集めてその隙に逃げてもらおうと思ったのだが、私と相対している方ではない、恐喝Bがしっかりと腕をつかんで離さない。
作戦失敗、まだ何とかなる。
「私は暴力で解決しようなんて思っていないから安心して、それはミスルだけだから。私は話し合いでなんとかしたいと思ってるの、話すことは何もないというのなら、その手を放してここから立ち去りなさい」
説得できればどうとでもなる、腕力ではかなわなくても私は話には自信がある。
「へぇ、あんたは暴力が嫌いだとしても俺らは暴力で解決したいって言ったらどうするんだ?」
当然こうくるのはわかっていた、私も馬鹿ではないし生まれついての善性は信じていても今この時の悪性を疑わないわけじゃない。
「それはやめた方がいいわ、私も暴力は使いたくないけど、ミスルはそういうの好きだもの。理由があればきっちり報復に行くタイプよ」
あの子は理由がなくても暴れるのは好きなタイプでもあるけど。
「うっ」と恐喝Aが青くなる。恐喝Bの方はサングラスとマスクで顔色はわからないし一言もしゃべらないからよくわからない。
たぶん恐喝Aに従ってるだけなんだと思う。
恐喝Aがひるんだしもうひと押し。いくらひるませても恐喝Bは少年の手を離さないのが厄介か。
少年が逃げたら私も逃げればいいのだけど、逃げられないならそうもいかない。
どうにかして恐喝Aに「いくぞ」と言ってこの場を去ってもらわないといけないのだ。
「よし、よーしわかった。話し合いだな、話合おう。ミスルをけしかけるのはやめろよ?」
「大丈夫よ、話し合ってるうちはミスルも来ないから」
嘘だ、あの子は暴れる理由があるなら来る、無くても来る。
「そもそも、なんで恐喝なんてしてるの?」
「そりゃあ、欲しいもんがあるんだけど値段がたけぇ。支給されてる分じゃ全然足りねぇ、でも働くのは面倒だ、とくりゃあ弱者から奪うしかないだろ?」
正直こういう話はたくさん聞いてきたが、聞くたびに信じられないという思いになるが、実際にそういう奴らはいるのだ。
「ふぅん、欲しい物って?」
「魔法だ」
確かに魔法は高い、簡単な物ならば支給されてる分のお金で買うこともできるだろうがちょっといいものになると流石に働かないと手が届かない。
「魔法、何の?」
「そりゃあ、おめぇアレだ。なぁ?」
恐喝Aは恐喝Bに向かって何らかの同意を求める。
恐喝Bはそれに頷いた。
なんだろう。
「まぁ、あれだちょっとそれは流石に言えない奴でな? わかってくれ」
なるほど、言えない魔法となると前の世界では法律で禁止されてたお薬みたいな効果のある魔法などいくつか想像がつくが、この状況で言えないとなると
「えっちな魔法?」
「っな」
恐喝Aの顔が真っ赤になる、もしかして恥ずかしがってる?これ私が恥ずかしくなるんですけど?
恐喝Bも少年も少し赤くなっている、なんなのこの空気。
「そこまで!」
「!?」
その場にいる四人以外の声が響いた。
ていうかミスルの声が響いた。
「なんかいつもに比べてうまくいってるみたいだったから様子見てたけど、これ以上はストップ、だめ、行っちゃいけない領域よ」
そう言いながら恐喝A、Bと少年をまとめてぶちのめしたミスルと帰ってアイスを食べた。
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