第240話:ニスコ=ナモ〜さよならスノーマン〜

 雪も少なくなってきて、だんだんと暖かくなってきた今日この頃。

 季節はもう暖季の終わり。この地方は結構遅くまで雪が残っているが流石に春季までは残らない。

 つまり、そろそろ別れの季節でもある。


 近所の広場に足を運ぶと、昨日よりも背の低い彼が待っていた。

「やぁ、今日も来たのかい」

「うん、毎年のことだしね」

「そうか、毎年か。君はなかなかに物好きなようだ」

 彼はそんなことを言う。もうそろそろお別れだと言うのに今年も彼は冷たい。

「いいだろ、これは僕の趣味みたいなもんなんだ」

「まぁ、止めやしないけど。私との時間なんて無駄に過ぎると思うよ?」

 先程よりも、更に小さくなった彼は言う。

 昨日まではこんなにも冷たくなかったと思うが、まぁ毎年のことだし黙っておく。


 僕は10年ほど前から冬季にはこの場所に来て彼と会っている。

 最初に彼と会ったときは僕が驚いたのだが、今では出会ったときは彼が驚くようになっていた。

 彼は動くことができないので、話すだけだが彼との話はなかなかに楽しい。

 長く生きているわけでもない彼が何故そんなことを知っているのかもわからないようなことを知っていて、話をしているだけで一日を過ごすことも多い。

 そして、毎年春季に入る直前にお別れがやってくる。


「そろそろ、お別れだけどなにか最後に言っておくことはあるかい?」

 僕は小さくなってしまった彼に最後の言葉を求めた。

「来年の私によろしく」

「うん、またね」

 そして彼は溶けて消えた。

 来年の君は、僕のことを知らないけども。

 溶けて消えた彼に最後の言葉を送る。

「さよならスノーマン」

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