第241話:ゴーン・タカナ〜地獄の鬼〜
地獄で死者に罰を与える仕事を引退してこの世界に来てからわかったことは、罰を受けたはずの罪人が罰を受けずに普通に生活しているということだ。
彼らは地獄にやって来ると同時にこの世界にもやって来ている。
地獄で罰を受けている彼らと同時にこの世界でのうのうと安寧な生活をしている彼かが存在している。
彼らは再び罪を償うべきだろうか、否か。
一応罪を償った彼らは存在する。
そして、彼らが罪を償った理由である来世に穢れを持ち越さないというのも、この世界に来ては関係がない。
それならば、俺は彼らを罰する理由が無いように思える。
あくまで俺が死者を罰していたのはシステム上の都合であり、仕事だったからだ。
しかし、穢れを溜めた魂を見るのもまた辛い。
どうにか罰を与えて浄化してやりたい。
職業病のようなものだと思うが、本当に辛い。
あまり人のいる街へは出ないのだが、たまに出掛ける時は穢れの多い者を目で追ってしまう。
仲間内でも「真面目すぎるんだ」とよく言われる。
何故こんなことを考えているかといえば、今、目の前にとびきり穢れに染まった魂の持ち主がいるからだ。
なんだあいつは、生前何をしたらあんなに穢れるんだ。
顔だけ見れば、魂の穢れを見なければ悪人には見えない。
そういう死者はたくさん見てきたがあいつはそれを越えている。
どれだけの命を奪ってきたんだ。
最近会った魔王とやらでもあそこまで魂は穢れていなかった。
世界の1つや2つ滅ぼしているんじゃないか?
あれほど穢れた魂を浄化するのに必要な罰は……
と、ここまで考えたところで我に帰る。
いかんいかん。
この世界であれだけの穢れを落とす罰を地獄基準で与えたら、穢れが落ちる前に死んでしまう。
そうだな、死なない程度に手早く穢れを落とすことができる罰を新たに考案しなければ。
流石にあいつ程の穢れを見れば仲間も賛同するに違いない。
そうとなれば帰って仲間と打ち合わせだ。
久しぶりに忙しくなるな。
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