第230話:ファクタ=フォークスⅣ~登録困難な新種生物~

 いつものように新種生物登録窓口に行くと、普段は閑散としているのに今日はなんだかざわついていた。

「どうした?」

「あ、フォークス氏。実はですな」

 聞けば登録されていない生物が発見されたけど誰も捕まえられなくて困っているとのこと。

「ほーん、それで?」

「それで、その新種生物にはいつもよりも多い報酬が出るのでありますよ」

「興味ないなぁ」

 捕まえられないから登録されていない物の、発見されている生物には興味がわかないな。

 金ももう腐るほどあるし。まぁ名づけは結構大変だから登録するときに命名権は売るんだけど。

「ちょっとちょっと、フォークス氏は捕まえに行かないんですか?」

「行かん、今日はコル^46の方へ行くことにしてるんだ」

「お、ちょうどそのあたりで目撃されてるらしいですぞ」

「……ほぉ、そりゃあ偶然だな」

 別に予定を変えることはないがな。


「新種ってもしかしてこれか……?」

 コル^46に到着した俺が見たのは巨大なつるんとした塊。

 上の方を見れば一応目玉のようなものがこちらを見ている。

 捕まえられないってのもしかしてこれ、でかすぎて捕まえられないってことか?

 体表面は毛もなし、触ってみると結構な硬さがある。

 これは体の一部を回収っていう登録の条件を満たすのはむずかしそうだ。

 まぁ、放っておくことにするか。


 …………これは思ったよりやりづらい。

 あいつ、でかい目玉でずっとこちらを見ているのだ。

 茂みが多く動物が隠れやすい地形だが、流石に俺が隠れるには小さいし、回り込むと器用にあいつも回りやがる。

 気にしないことにしてもふとした瞬間に目が会うし、他の奴らは来てないのか?

 高額の賞金がかかっているんだろ?

 もっと人が集まってもいいだろうに。

「あー、もうだめだな。今日は帰る、帰るぞ!」

 ボォー…………

 なんだ?

 ボォー…………

 あいつの声かこれ、巨体に見合った重低音が響く。

 ていうか、よく考えたらあいつがここにいる間はここで探索できないんだよな。

 危険生物ならハンターに討伐してもらえるんだが、面倒な奴だな。


「あ、フォークス氏」

「おう、どうした」

 翌日、新種生物登録窓口へ行くとまだざわついていた。

「こないだのアレ、いなくなっちゃったらしいですよ」

「ほぉ、あんなでかいのがなぁ」

「そういう特性を持つ生物だったんですかねぇ」

「かもしれんな」

 ポォー……

「なんか変な音聞こえません?」

「ん、ああ昨日変な虫に付かれてな。その虫が鳴いてるんだ」

「新種ですか?」

「ああ、昨日帰ってきてから登録した。俺から離れないからそのままにしてるんだ」

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