第220話:ユーゲン〜死の無きの世界で生きた人〜
死んだ。
死んだのだ。
無限を過ごす世界で一人きりの【限りを持つ人間】として生まれ、終わりを迎えた。
死ぬとこんな暗くて壁で囲まれた場所に送られるのか。
死ぬことがあるのは有限な物だけだと聞いていたので、この場所は有限な物で満ちているのかもしれない。
これは、空間も有限なのだろうか。
死んだことのある物は周りにいなかったから死ぬとどうなるかってことはあまり聞けてなかったんだよな。
「死んだら終わりなんだよ」とはよく聞かされていたが、終わりっていうのがわからなかった。
聞いても「端にたどり着いてしまうことだ」ということしかわからなかった。
そういえば、端を持っていたのは私だけだったかもしれない。
彼らは無限だったから。
私はこれからこの有限の中で眠るのだろう。
「さて、そろそろ出てこないと転がしますよ」
有限の外から声が聞こえた。
「なぁに?」
「気づいてるようなら出てきてください、その壁は簡単に壊せますから」
壁に触るとパラパラと崩れるように壊れた。
崩れただけだ、続かない。
この壁も端に、終わりにたどり着いたのだろう。
「出てきましたね」
有限の外は無限ではなかった。
「まずは名前を、って聞いてます?」
壁の外には私と同じように有限を持っているようなヒトがいた。
「名前、名前ってなに?」
「あー、言葉をあまり知らない生まれですか。えーとそうですね、以前はなんて呼ばれてました?」
「ユーゲン」
確か、ユーゲンと呼ばれていた。
それが私を表す言葉だと。
「はいユーゲンさんですね、では次に……。その前に気になることがあれば答えますけど、何か聞きたいことは?」
「ここは有限?」
「……世界は無限に広がってると聞いたことはあります、しかし、無限の中には無限の有限があるとされています。少し難しい表現しかできませんでしたが、理解できましたか?」
無限の中に無限の有限、 よくわからないが、私は無限の中の有限だったのだ。
ここには無限に私と同じような物がいる、そういうことなんだろう。
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