第218話:ネジャ・ナルノⅡ〜叩くならこれだな〜

「ねぇ、ネジャ」

「なんだ?カウス」

「今回の討伐対象ってなんだっけ?」

「えーと、ベンベンボムモルオオトカゲの討伐、証明不要」

 携帯端末デバイスに記録したクエストの内容を読み上げる。

「で、これは?」

「ベンベンボムモル……、オオトカゲってサイズじゃないねぇ」

 目の前にいるオオトカゲ、ベンベンボムモルと呼ぶらしいそれは大きなトカゲというサイズじゃない。

「この大きさだと地竜とかそういう呼ばれかたになると思う」

「間違いないね」

 聞いた話ではこちらから攻撃しない限りは危険はない生物らしいけど、攻撃すると暴れるらしいしなぁ。

「カウス、これ跳ばせる?」

「無理、端まで音が届かない」

「だよねぇ、大きすぎるし」

 うーん、色々考えてみたけど、やっぱり

「殴るしかないかな」

「そうだね、ネジャに任せるよ。私は少し離れてサポートするから、頑張って潰してやってください」

 カウスは離れる。いつものことだし気にしない。


 パチン

 カウスの指の音が響く。

 私はバングラム質量の怪物を構えたまま、オオトカゲの頭の上に現れた。

 ナルノ怪腕の能力で重さを消したまま振り下ろし、速度を乗せて解除する。

 ドゴォン!と確かな手応えと共にトカゲの頭の真ん中にバングラムがめり込む。

 いや、めり込んでいない。

 頭部に当たって多少の傷はつけているがまったく堪えた様子はない。

「ネジャ!」

 パチンという音が響いたような気がした。

 その小さな音は次の瞬間に発生した轟音、トカゲの咆哮にかき消された。


「ネジャ、大丈夫?」

 カウスの声で我に帰る。

 トカゲの咆哮で意識が飛んでいたらしい。

「うん、大丈夫。だけどあのトカゲ、バングラムが通じない」

「みたいだね、どうする?逃げちゃう?」

「嫌、だってあいつ叩いたときスッゴい気持ちよかったんだ」

 もっと叩きたい、そう思ってしまうぐらいに。

「もし危なくなったらカウスだけでも逃げてね、私はあいつを叩き潰してから帰るから」

「私は隠れてみてるけど、大丈夫?」

「大丈夫だよ、なんとかなるから」

「まぁ、危なそうだったらさっきみたいにこっちに引っ張るけど、気を付けてね」

「ありがと、じゃあ行ってくる」

 バングラムを担ぎ上げ、トカゲの方へ向かう。

 今度は足元へ。

 さぁて、叩くぞ!

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