第215話:メーティカ=メーティカⅦ〜煮込む鍋〜

 カウンターの裏で鍋がグツグツと音を立てている。

 鍋の中にはいくつかの薬品と鉱石の粉末を混ぜたものがフリュスト熱を蓄える石が発生させる熱で沸いている。

 注文されたからには作るしかないけど、自分が飲めないものを作るのはあまり好きじゃないんですよね。

 別に毒物だから飲めないとか、いう訳じゃないですけどというわけではないんですけどこれ、熱くて飲めないんです。

 飲み物の名前はフィンクル トルメニ溶けた甘い石の汁

 その名の通り、甘味を持つ鉱石を溶かして飲むというものです。

 一応その鉱石は砕いて砂糖のように使うこともあり食用に適した物なのですが、溶かして飲むとなると融点の高さ的に非常に熱くなってしまうんですよね。

 溶かすと味も少し変わると聞きましたけど飲めないからわからない。

 そして、これを飲むお客さんはと言えば見た目からして生き物なのかあやしい、いえ、私の生きていた世界の常識では生き物とは呼ばれなかった物。

 ゴツゴツした石の人です。

 なんとか人形をしている石、大きさ的には岩ですかね。

 一応顔もなんとなくわかるので、なんとか人と認識できるような、そんな感じの見た目です。

 鍋も煮詰まったのでお客さんの方に出しますか。

 触れたら火傷では済まないので、慎重に浮遊魔法を使って運ぶ。

 カウンターに直接置くわけにもいかないので(焦げるし)直接お客さんに渡す。

 石の体は熱さに耐性があるのかそもそも熱さを感じないのか、なんのためらいもなく溶けた鉱石が入った鍋をゴツゴツした手で受け取ってくれた。

 そのまま、口(らしき窪み)に流し込んだ。

 うーん、溶けた鉱石は美味しいんでしょうか。

 そもそも彼には味覚というものが存在するんでしょうか。

 うーん、他の種族のことはよくわかりませんね。

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