第203話:ドロースⅣ〜滞る支払い〜

 まずいな…………。

 携帯端末デバイスに表示されている所持金の残高を見て思う。

 思いの外、金が足りない。

 今季は少し体調を崩してしまい、バイトを何度も休んでしまったのがよくなかった。

 食券は支給されるし生活に困ることはないが、借金の支払いに間に合わない。

 その支払いも、毎季これだけ納めろという額を指定されているわけでも、この日までに納めろと指定されているわけでもない。

 自分でこの日にこれだけの額をきっちりきっかり納めると決めているだけだ。

 しかし、自分が勝手に決めていることとはいえ、良くない。

 支払日まであと3日、足りない分を何としても工面しなければ。


 しかし、どうしたものか。

 即日払いの仕事を今から探すかとも思ったがダメだ。

 足りない分を補えるだけの仕事だと丸1日拘束されてしまう。

 他に入っているいつものバイトもあるし、そういうわけにもいかない。

 となると、やはり手持ちの換金可能な物を質に預けるぐらいか。

 と思ったが、そもそも、私物が無さすぎる。

 唯一お金になりそうな私物は回復ポッドぐらいだが、流石にこれを質入するわけにはいかない。

 体が資本なのだ、これを質入しては稼ぎに支障が出る。

 しかたない、これだけはしたくなかったのだが、これしかないだろう。


 なんとか、支払い予定日に払うことができた。

 非常に不本意だったし、本末転倒な気がするが別の知り合いに少しだけ借りて返した。

 借金を返すために借金をする、泥沼な気がするな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る