第179話:エルメン‐ハイム~電気の獣~

『というわけなんですけど、どうでしょうか』

 科学の都市テルヴィアへ向かわせていた戦闘員から、現地の電獣ビリハンターの者から協力の申し出があったという通信が入っている。

「どうでしょうも何も、強力な武器を支援してもらえるんなら協力しない理由がないんじゃない?」

『それはそうなのですけど、俺は彼らのやり方が気に入りません』

「囮にされたこと?」

『いえ、電獣ビリを利用しているということです』

「ふむ、続けて」

『以前、発電所に行った時にはかなりの数の電獣ビリに襲われました』

 発電所で襲われた?

 発電所のような場所では電力が十分あるから、わざわざ生物を襲うようなことはないはずだ。

『昨日遭遇した知能のある超級の電獣ビリは彼らに恨みがあるようなことも言ってました、発電所の電獣ビリは俺が電獣ビリに気づいたと知った瞬間襲ってきました、きっと電獣ビリを認識できる人間は敵だと認識しているんでしょうね、生物としての振る舞いを見せる電気の塊に恨まれるなんて、彼らはどれ程のことを電獣ビリにしてきたんでしょうか』

「なるほど、そういえば君は電獣ビリをただの害獣として駆除しているわけではなかったかい?」

『確かに電獣ビリは害獣です、放置するのは危険極まるし、見かけたら駆除します、ですが、恨まれるような利用の仕方は違うと思うんです』

「なるほどね、君は電獣ビリを嫌っているが、生物として認識しているんだね、だから無駄に痛め付けたりするのを躊躇う、殺すなら苦しまないように殺してやりたい、そういうことなんでしょう?」

『そうかもしれません』

「それで、どうしたいの?」

『どう、とは』

「彼らと協力するかどうかは君が決めていいよ、彼らに助けられたのは君で、彼らに不信感を持っているのも君、そして彼らと協力して最も利益を得るのも君、テルヴィア以外の電獣ビリは大した力を持っている訳じゃないから」

『そうは言っても、うちの持ってる情報を要求してきますよ』

「渡せばいいでしょ、私たちと彼らは敵対しているわけじゃないし、渡したからといって私たちの何かが変わるわけじゃない、協力して嫌な気分になるのも君、楽になるのも君だからね」

『…………わかりました、返事をしたらまた連絡します』

「うん、待ってるよ」

『ブツン』

 そして通信は切れた。

「さて、イムデラ君はどうするかなぁ、たぶん受けるんだろうけど」

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