第124話:サムスタ〜精霊魔導師の苦悩〜

 私の使う魔法は精霊と契約して精霊の力を貸してもらう、所謂精霊魔法と呼ばれるものなのだが、この世界では問題があって使えない。

 この世界にいる精霊が気難しく契約に応じてくれないとか、そんなことではない。

 そんな理由であったならば、契約に応じてくれる精霊を探すなりしてどうとでもできるのだけど、もっと根本的な問題がある。

 単純に、この世界で精霊が見つけられないのだ。

 この世界は死んだことのある者が集う世界、もしかしたら精霊は死なず、この世界に来ない存在なのかもしれない。

 他の世界で生まれた精霊は見かけたことがあるのだけど、私の魔力は気に入らないみたいで、契約はできなかった。

 その個体以外も当たってみたけど、大体どの精霊も同じような答えを返してきた。

 この世界に私より先に来ていた精霊魔導士の人に話を聞いてみたところ、「魔力の質というものは世界によって多少異なり、精霊はその違いに敏感だ。彼らの体を構成しているのは魔力であり、世界が違うだけで体が受け付けないらしい」とのこと。

 その精霊魔導士の人もこの世界では精霊と契約できていなくて、契約できる精霊を見つけることができれば、すぐにでも精霊魔導士になると言っているが、今は特定の仕事には就かず、精霊を探す旅をしている。

 その旅の話は、この世界では精霊魔導士は諦めた方がいいかな?って思うぐらい過酷だ、これは元の世界でも同じだが、普通の街中や草原、森等の比較的安全な環境を巡っても高位の精霊は見つからないので、非常に特殊な環境な場所を探し回っているらしい。

 この世界の秘境は元の世界など比にはならないぐらい過酷だという話もされた。

 私も、元の世界では多少の危険地帯に行って精霊との契約を結んできたが、この世界の秘境の過酷さは少し尻込みしてしまう程だ。

 精霊を探し回っていない半分の精霊魔導士だった人たちはこうやって諦めっていったんだろう。

 私もこれは厳しいと思う、無理、流石にもう死ぬのは勘弁してほしい。

 そもそも、危険な場所に行くのは低級精霊から順序良く契約していって、その環境を超えられるようになってから行くものだ、契約精霊ゼロの状態で行くものではない。

 大精霊級は契約精霊の数で契約をするか決める個体もいるし、その観点からでも契約精霊ゼロで行くものではない。

 ていうか、この世界で一人も私の世界から来た人で精霊と契約で来た人の話が一切ないってことはどれだけ秘境へ行っても精霊自体がいない可能性があるし、無駄な危険を冒すこともないかな。

 私は精霊を探しに行かないことにしよう、契約できたって話を聞いたら探しに行く感じで。

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