第84話:ルルニア=ローテルⅣ〜説明不要の転生者〜

「では、死後の生活をお楽しみください」

 ふぅ、これで今日は7人目、まだ日4つだというのにやたらと転生ペースが早い。あまり変な人は来ていないのでいいが、油断してると来る。

 おっと、もう次の転生者が来た。

 声をかけるまでもなく、自分から卵を割って出てきた。ロボが観測したデータを見てその世界に合わせた言葉で話しかける。

「突然なのですが、あなたは」

「死んだのでしょう、わかっていますよ」

「え、それは話が早いですね、まずは」

「名前はヤークラーク、個体番号は47番、死んだときの年齢は34です」

「え、えーと?」

 なんなの、私が聞くより先に答えてくる。

 もしかして、思考を読む能力でもあるのでしょうか。

「…………」

 こうやって考えていたら思考を読んで返事をするかと思ったのですが、してきませんね、思考を読んでいるわけではないのでしょうか。

「はやく、私が向かうべき受付を教えていただきたいのですが」

 黙っていると、向こうから聞いてきた、マニュアル的には名前、年齢、と聞いて、次に説明するべき項目だ。

「え、あ、そうですね、ラッカーから来た人の受付はあそこの扉を出て左の16番目です」

「そうですか」と答えて彼はさっさと行ってしまった。

 なんだったんだ。


 休憩時間、事務所にて。

「ふぅん、なんの説明もなしに、自分で名乗って、次に説明する内容を催促してきたんだ」

 太った所長にさっき来た変な人のことを話す。

「そうなんですよ、今までそんな人来たことなくて」

「思考を読む能力者だったんじゃないのかい?」

「考えてることに返事をしてる風じゃなかったんですよね」

 彼との会話を思い出しながら話す。

「もしかしたら、この世界に来るのが二回目とか?」

「いやいや、それはないでしょ、この世界で死んだ人は少なくともこの世界に転生してくる世界には行っていないことは長年の研究によってわかってるんだから」

「それでも、なんだか彼の対応は慣れてるって感じでしたよ」

「慣れてる、ねぇ?僕の方で少し調べてみるよ、名前は」

「ヤークラーク、あと、個体番号は47番だとか」

「それでラッカーからの転生者ね、ラッカーは別に名乗りに番号をつける風習がある国みたいなのはなかったはずだし、彼の育った環境の問題かな」

「ですかね」

 さて、休憩終わり。


「名前はヤークラーク、個体番号は48、死んだときの年齢は34です」

「えーと、」

 さっきも同じ人が来たような。

 ようなではなく、来たんですけど、同じ人が連続することはよくあることですけど、さっきと個体番号が違う?

「ラッカーからの転生者はあの扉の左、16番受付にいけば良いのですよね、では」

「ちょっと待ってくださいね」

 説明するまでもなく、自分で予め知っていたことを確認するかのように言い、出ていこうとするのを止める。

「ヤークラークさん、あなたは、何者でなんですか?なぜ、私から質問することや説明することが予めわかっているように話すのですか」

「前回までの問答には無いパターンだ」

「前回まで?」

「スムーズに話を進めたいので説明しましょう、質問はひとつの話が終わるごとにお願いします、話の途中で割り込まないように」

「わかりました」

 つまりは聞くのならば黙って聞けと言うことですね。

「なぜ、私があなたの説明や質問を予め知っていたかのように振る舞うかでしたね、その答えは、予め知っていたからです」

「はぁ、」それじゃあ答えになっていない、と続けようとしたところで、不機嫌な顔になり口を押さえられた、まだ話は続く、遮るなと言うことでしょうね。

「どうやって知ることができたと思います?」

 聞いてくるが口を押さえられたままでは答えられない。

「うーん、やはりわからないですか」

 口を押さえられているから答えられないんですよ、まぁ、わからなかったけど。

 なんかムカつくしゃべり方だな。

「実はですね、私には特殊な能力がありまして、それは分身の能力なのです、分身、わかります?体を増やす能力なのです。そして、ここからがこの話の要点なのですが、分身同士は記憶を共有することができるのです!」

 だんだん話し方が身ぶり手振りも交えて、声も大きく、仰々しくなってきた。

「つまりですね、この世界に先に来ていた私の分身により、この世界に来た時点でこの世界で過ごした記憶、当然、先のあなたとの問答の記憶もあるのです!以上、説明終わり!」

 やっと終わった、手も口から離れたし、これで口を出してもいいだろう。

「生きていたときはこの世界の記憶は共有されてないんですか?」

「ええ、死んでこの世界に来てはじめてこの世界にいる我が分身たちと繋がりました、まさか異世界で生きていたとは、と最初の二人は思ったと記憶にあります」

 しゃべり方が最初の淡々としたものに戻った、さっきのはなんだったんだ。

「あなたの記憶ではない?」

「私の記憶は我らの記憶、我らの記憶は私の記憶なので、私の記憶です」

 それだけ言って、出ていった。

 うーん、つまり、分身はみんな合わせて一人みたいな感じですかね。


 そのあと、この日だけで個体番号57までのヤークラークさんが私の担当として転生してきた、最初は普通だったのに、なんだったんだ今日は。

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