第83話:ライマリー=ナーズⅢ〜反転する世界〜
目が覚めるなり大音量のアラーム、いや、アラームで目が覚めた。
なんの騒ぎだ、んん?
なんでこんな場所で寝ているんだ、ここは、えーと、天井だな。
天井?上を見るとベッドが床に張り付いている。
少し寝ぼけてるようだな、寝直すか、とも思ったが、アラームがうるさいし、天井は固くて寝辛い。
しかたない、アラームを止めにいこう。
デッキまで歩いて移動している途中で完全に目が覚めた。
なんでこんなことになっているんだ、天地がひっくり返っているじゃないか。
デッキにたどり着き、アラームを止め、表示されている問題を読む、逆さだと読みづらいな、えーと?【重力不順】?
うおっ、また天地がひっくり返る。
一応正常な向きにはなったが、再びアラームが鳴り始める。
ああ、ひっくり返ったときに腰を打った。
再びアラームを止める、画面に表示されているのは依然として【重力不順】。
寝ている間にも何度かひっくり返ったらしく、散らかったデッキから
えーと、重力不順ってのはいったいどういう状態なんだ?
『機体に複数搭載されている重力検知をするセンサーの計測値が全て、もしくは一部がことなっている状態、機体の向きは第一重力センサーに合わせる』
つまり、今飛んでいる場所は重力センサーが狂う空ってことか?
広い窓から下を見ても大地は見えない、昨日はまだ普通に見えていたはずだが。
上を見ると太陽との距離は今までと変わりない、は?上に太陽?
太陽は昨日までどっちにあった?確かこの窓の反対側だったはずだ。
ちょっと待て、今機体はどっちを向いていて、どっちに向けて飛んでいるんだ。
確か、上に向かって飛んでたはずで、つまり、太陽に向けて飛んでる?
ヤバい!
操縦を自動操縦から、手動操縦に切り替え、とにかく、太陽から離れるために、機体の頭を太陽と逆に向け、一気に離れる。
ああ、重力の向きがどっちを向いているのかもわからん、どうなっているんだ。
少し離れると、重力の向きが何度もぐるぐると変わり、アラームが止まる。
やっと床が下になり、重力が正常になった。
自動操縦を入れ、項垂れようとしたらまたすぐに重力の向きが変わる。
慌てて自動操縦を切り、ホバリングさせ、センサーを使わず、機内の重力の向きを調節し、床に足を下ろした。
一体なんだったんだ、起きたばかりで胃の中に何も入ってなかったことが幸いしたな、もし入っていたら吐いていたな。
あー、気持ち悪い。
突然なんで重力がおかしくなったんだ?まだ、向こうとの中間点には距離があるはずだ。
もしかして、これ以上高い場所はもう、重力がおかしくなってるのか?
こっからは、自動操縦は使わない方がいいな、センサーが狂ってるどころか、実際に重力の向きがおかしくなっているようだ。
慣れるのに暫くかかりそうだが、仕方あるまい、これからずっとこの調子で重力がおかしい空間を飛んでいくとなると、一度この辺りのデータを集めて持ち帰って、再び準備した方がいい気もしたが、あんな出発の仕方をして半分も来ずに帰るというのも恥ずかしい。
この機体はどんな問題にも対応できるとまで豪語してきたのだ。
想定してませんでしたとは言いたくないし、この現象が起きるのはこの辺りだけだったりしないだろうか。
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