第55話:ジャン-ベイヤーⅡ〜巨大生物対巨大ロボット〜
巨大ロボット演習体験の仕事も軌道にのり、他の世界の巨大ロボット乗り達も集まってきて、今や保有している巨大ロボットは10種30機を越えた。
そんなある日、政府から緊急の連絡が入った。
「なに、巨大生物の転生卵がこの付近に出現、万が一の場合巨大ロボットによる出動を要請する場合があるため、実戦の用意をしておくように、だと?」
実戦と言われてもだな、俺達のやっているのは演習だけだし、当然模擬弾しか持っていない。
「いいんじゃないか、演習だけでは腕も鈍る、それにこれは公式に武力を持っていいという政府からの許可みたいなものだ。お前も、久しく戦っていないだろう?」
【コンヴァクト】の開発者、ノグ爺は乗り気か。
「そうは言ってもよ、巨大生物ってなんだよ」
「お前見たことないのか。数年に一度ぐらいのペースで色々現れるぞ、俺が前に見たやつなんか、空は飛ぶわ、火も吹くわ、表皮がアウスモ(マンノビアに実在する加工不可能な程に硬い金属)並みの硬度の奴もいたな、あの世界で出たらどうなるかわからんような怪物ばかりだ」
「そんなもん、今までどうやって退けてきたんだよこの世界は」
「そんなもん、この世界にはいくらでもそんな奴らを狩れる奴らがいるんだよ。 物語の外に魔王も勇者もいるんだ、聞けば神殺しをした奴やその殺された神なんかもいるんだ、巨大生物ぐらいどうとでもなるんだろうよ」
「俺達の出番、あるのか?」
「さぁな、一応要請があったんだ、出撃出来るように実戦用の武装揃えるぞ」
「ああ、そうだな」
一応、持っているに越したことはない、か。
巨大生物に備えろという、連絡から数日後。
各ロボットに本来搭載されていた武装と、対巨大生物用に調整された特殊武装も一応一通り揃えた。
政府からの情報によれば近日中に転生卵が孵化して、中から巨大生物が出てくるらしく、巨大ロボット達の武装も模擬弾から実弾に積み換えているため、演習体験は休業中だし、いつ呼び出しがかかるともわからんから正規パイロット達も帰れん。
「この損失分は後から請求しなければならんな」
「まったくだ、これで人間兵器のような奴等だけで討伐なんてなった日にはもう、誤射してしまう可能性があるな」
「何でもいいから戦わせろ」
こいつら血の気多いな、俺もイライラが溜まってきたし、巨大生物と生身で戦うようなやつらだ、俺達の兵器程度で死んだりもしないだろう。
「その辺は各団体でうまいことやれとのことだからな、自由にやればいいさ。
特にうちは巨大生物との戦闘経験がある奴も少ないし、役に立てるかどうかも怪しいんだし、気楽にやろうぜ」
一応、俺がこの団体のリーダーであり責任者なのだと、周りのストレスを軽減させるようなことを言っておく。
そんなとき、荒野の向こうに見えていた巨大な卵が爆発し、中から巨大な何かが現れた。
同時に、
「あれが巨大生物か」
「この距離であの大きさって、やばくね?」
「いや、まぁ、生物なら兵器で殺せないこともないだろう、行くぞ!」
機敏な動きで各自ロボットに乗り込み、巨大生物に向かっていく。
実際に巨大生物を遠目に見ただけで結構怖じ気付くな、ていうか俺も少しビビっている。
近づいてみると、既に勇者パーティーが戦闘を開始していた。
本当に生身だよあいつら、一発でも攻撃受けたら死ぬんじゃねぇのか。
それにしても、俺もコンヴァクトより大きいやつと何度か戦ったことはあるが、コンヴァクトで見上げるほど大きいやつとは流石にない。
「とにかく、脚狙うぞ脚!機動性奪え!」
「狙うなら頭だよ!さっさと殺せぇ!」
「ヒーラー呼べ!」
「火力足りねぇぞ!大魔導師いねぇのか!」
など、怒声が響いている。
なんだこの戦場、地獄かよ。
とりあえず、うちの集団も狙えるところを一斉に攻撃するがあまり効果が無さそうに見える。
巨大生物が少し動く度に何人か吹っ飛ばされているが、案外無事なようだ。
うちの集団は少し遠巻きに攻撃しているため、巨大生物の身動ぎ程度で被害を受けたりはしないが、この大きさだと少しかすっただけでも大破するな。
もしかして、生身の勇者達よりも俺達の方が防御力低いのか?
そんな地獄のような戦闘を続けていたが、段々勇者達以外にも元魔王といった、やべぇ奴等が集まってきて、巨大生物は徐々に削られていき、最後には息絶えた。
「次の要請が来てもうちは出撃しない、いいな?」
巨大生物討伐の翌日、参加したパイロットと何人かの経営陣を集めた会議を開いた。
内容は今言ったように、巨大生物討伐に参加するかって話だ。
当然のようにパイロット達の答えは満場一致で肯定、中にはもう正規パイロットを降りると言う者までいた、それは流石に説得したが、無理もないな。
会議の結果、当然のことだが俺達は二度と巨大生物の討伐要請が来ても出撃しないということになった。
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