第51話:カイ・サクレⅡ〜不完全遺跡〜

 今日のターゲットは探検家の中で通称、不完全遺跡と呼ばれている遺跡だ。

 この遺跡、遺跡としては真っ当に遺跡をしているのだが、元々人が住んでいたと考えると途端に不完全になる。

 遺跡ができる理由に、元の世界が全滅して人口の増加が止まり、元々鎖国状態だった都市国に住む人間がいなくなるというものがある。他国に侵攻するような国は存在しないし、大抵火が消えるようにふっと都市は遺跡になる。

 そのため、大抵の遺跡は遺跡となってからしばらくの間は生活の跡が色濃く残っている場合が多い。

 そうして、この不完全遺跡も最近遺跡になった若い遺跡で、生活の跡がまだ残っている。

 しかしだ、この生活の跡こそが問題、この遺跡に住んでいた者達の文化なのかもしれないが、色々な物が不完全な状態で残っている。

 遺された道具は全て要となる部分が失われており、どれも正常に動作しない。

 しかし、この遺跡に遺された道具はどれも技術力が高く、不完全でも買い取りレートはそこそこ高い。

 今はもう、簡単に手にはいるアイテムは殆ど持ち去れてしまっているが、中に完全な品は1つも存在していなかったという話で、完全品を発見すればそれこそ、一生趣味で最高級のツールを揃えて好きなだけ遺跡探索に潜ってもお釣りが来る程だ。

 なので、危険なエリアに潜ってでも完全品を探し求める探検家が後を絶たないのがこの不完全遺跡という遺跡である。

 不完全遺跡なのでセキリュティも不完全なのだが、絶対殺すような仕掛けが8割ほど殺すという程度に不完全なため、死にはしないものの、かなり危険なエリアもある。

 今日俺が潜るのは、その危険なエリアでも特に危険なエリア、侵入者を発見したら絶対殺す警備ロボットが不完全になり侵入者を発見しなくても、殺す兵器をぶっぱなすような完全であるよりも不完全故に危険性が上がっているというエリアだ。

 探検家達の持ち帰った、不完全さリストを精査した結果、不完全さに偏りがあることがわかったのだ。

 そのデータによれば、このエリアは他のエリアと比べて不完全さが少なく、中心に不完全でない物がある可能性が非常に高いのだ。

 俺は想定しうるありとあらゆる危険を回避するための道具を用意し、遺跡の中でもっとも危険なエリアに踏み込んだのだ。


 侵入者がいてもいなくても殺す暴走警備ロボットが徘徊する通路を抜け、さらに奥、本来ならば侵入者を生け捕りにする機能が不完全になり、侵入者を殺す警備ロボットがうろつく通路も越え、致死の毒ガスのタンクの気密が不完全になった部屋の奥でついに完全なロックのかかった不完全な模様を持つ金庫を見つけた。

 予想、いや、期待としてはでは、この中にこの遺跡の不完全を作り出している完全な装置があるはずだ。

 ロックを解除し、金庫を開ける。

「不完全遺跡、全ての物から要が失われた遺跡だったな」


 金庫の中にあったのは、機密保持のためにアイテムの要を抜く装置、その対象を指定する機能が不完全になったものだった。

 つまり、これも不完全品だ。

 試しに持ち帰り売ってみたが、査定機が不完全になったのではないかと疑わざるを得ないような安値にしかならなかった。

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