第38話:ウナ-ローンⅡ〜魔法科学研究室〜

 今私は研究室に来ているのだが、思ったよりやることがない。

 今日は珍しく私が呼ばれるまでもなく来てやったというのに、特に仕事はないらしい。

「おい、なぜ私が来てやったというのに仕事がないのだ」

「むしろなんで暇な日に狙ったように来るんですか」

「しるか!私がこんなにやる気になってることなど滅多にないんだぞ!」

「そのやる気も最近やってるゲームが起きたらメンテ中だったからじゃないですか」

「そうだよ!悪いか!」

「悪くないですけど、そんなことがなくてもやる気だしてくださいって話ですよ!」

「なにをー!」

 全く、この助手と来たらいつもいつも失礼にも程ってものがあるだろう。

「それで、私にはやることがないのに君はさっきから何を忙しそうにしているんだい」

「室長に任せてもどうにもならない書類仕事ですよ、こういうの嫌いでしょう?」

「嫌いだけども!私が暇していて君は忙しいというのが私には許せないのだよ」

「そんな理不尽な!」

 いやーまったく、助手君はまったく、まったく上司に対する態度ってものがなってないな!

「室長、そんなに暇なら新しい企画でも考えてみたらどうです?最近実地調査とかしてるし、素晴らしいアイデアがあるんでしょう?」

「む」

 刺のある言い方、今まではこんなこと言わなかったのに、こういうのどこで覚えてくるんだろうね?

「いいだろうその挑発に乗ってやる、私が練りに練りまくってぐにゃんぐにゃんになった完璧な企画を見て驚くなよ!」

「ぐにゃんぐにゃんになった企画って凄いダメそうな響きですけど」

「うっさいだまれ!くそぉ、魔力が使えたら貴様など洗脳して文句も言えないようにしてやるというのに」

「出来たとしてもこの街でそんなことしたらすぐに抑えられちゃいますよ」

「私がこの街の人間程度で抑えられると?」

「出来るでしょうよ、完全に魔力により発生した事象を遮断する盾や、肉体強化魔法に匹敵する出力を実現するパワーウェアもありますからね、どれも開発したのはあなたですよ、忘れてはいませんよね」

「そーだよ!今この街が完全に魔術を排斥出来てるのも私のお陰だよ!そんなもの作らなければよかったよ!」

「作ってなくても室長は魔力が一切使えませんけどね」

「そーなんだよねぇ」

 そう言って机に項垂れる。あ、ひんやりして気持ちいいなこれ。

 ひんやりを堪能していたら、だんだんアイデアが落ちてきた。

「あーそういえば雨を弾く魔法ってあったよね」

「ありますね、それが?」

「それ作ろう、雨季入って雨増えると外出たくなくなるし、確かまだ同じことができる装置みたいなの作ってなかったよね」

「どうせ、雨の日にあのゲームしたいけど、外に出るのが嫌だからとかそういう理由なんでしょう?」

「そーだよ!悪いか!実地調査の成果を活かせって言ったのは君だろう」

 まったく、本当に助手君は助手としての態度というものがなっていない、まったくだ!

「室長、アイデアが纏まったみたいですしテルテルトルトルでも飲みます?」

「飲む!」

 まったく、助手君はまったく!って感じだよ!

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