第15話:ペコ・ラインス~世界の果てを目指す旅人~

 この世界の大地は果てがないと言われているが流石にそんなことはないだろうと僕は思っていて、転生してきて13年目、僕、ペコ・ラインスは世界の果てを探す旅に出た。

 最初に現在最も端にある国の中でも最も太陽から遠い国にターミナルから移動し、そこからは大量の食糧を積み込んだ車(この世界では基本的に地面を走る汎用的な乗り物の事、車輪がない場合も多い)でひたすら走る。方角は常に太陽を背にして走り続ければ世界の果てに向かっているということになるだろう。結構、僕より前にも同じようなことを考え、旅に出た人も多いらしいが誰一人として戻っては来ていない。世界の果てを目指した全員が途中で野垂れ死んだか、世界の果てを目指している途中かのどちらかだろう。

ただ、僕は先人とは違う、世界の果てがあるのなら絶対にたどり着ける作戦があり、それに僕は絶対の自信を持っている。まぁ、今は説明しないよ、また後からね。

 とにかく、僕は世界の果てを目指して旅に出たんだ。とりあえず、風景を楽しみながらのんびり行くことにするよ。時間はたくさんあるしね。僕のいた世界での世界の幅は百万クロンぐらいだったけど、仮にその一万倍だったとしても千億クロンだ。思ったより遠いな。大丈夫かな?

 まぁ、さっきも言ったように時間はいくらでもある。車を飛ばせば一日二万クロンは走れるし、それだけあれば一年に一千万クロンは行ける。(一日は地球での37時間、平均日照時間は19時間、一年はそれが513日ある)

 それだけあれば千億クロンは千年で行ける、僕は比較的この世界では長命な世界の人間で千年ぐらいなら何とかなるだろう、実際、そんなにかかるかどうかもわからないしな。


 世界の果てを目指して十日目、険しい山脈に行く手を遮られた、車を飛ばして超えればいいのだが、結構高いし、山の周りには植物が茂っているからこの辺りは動物がいるかもしれないな。こっちの方まで人は来ないから、危険な魔物が駆除されずに残っている可能性もある。迂回するべきかするまいか、うーむ、山脈を迂回してどれだけ遠回りになるかわからないし、危険な魔物がいるかどうかもわからない。飛んでいけばたいていの魔物はわざわざ追って気はしないだろう、よし、飛んで山を越えよう。

 車に搭載された航空魔法ユニットを起動させ車を地面から離す、最初は百クロン程浮き、そこで少しの間止まり車体のバランスを整える、そしてそこから一気に上空まで飛び上がり、山脈を一息に飛び越える。流石に上の方に生物の姿は見えず、安心していたら、突然上空に影が現れた。

「嘘だろ……」

 あれは竜種、魔獣などとは格が違う神獣だ。おそらくこの山を根城にしている竜で、山に侵入した僕に警戒を与えるために現れたのだろう。やばい、竜種は一部の個体は人語を解すし、人に友好的な個体もいる、しかし、今車の上空を飛んでいるこいつがそういう個体かどうかはわからない。そもそも、竜種は寿命を持たないことが多く、何らかの理由で討伐されない限り死なないというのが大体の世界で共通しているらしいから、この世界にいる竜種は基本的に人間に敵対していると考えてもいいだろう。僕は今、そんな竜種に上を抑えられたのだ、これは、死んだかな?まだ、十日だぞ。国を出て、二十万クロン程度しか来ていないのだ。こんなところで僕の旅は終わってしまうんだろうか。

上空にいる竜は未だに上空を飛んでいるだけで攻撃してきたりはしない。警告だけ?もしかして、この竜は人にちょっかい出したら集団で来られて討伐された過去があるのかもしれない。

「もしかして、見逃してもらえるのか?」

『見逃すわけではないぞ人間』

「うわぁ」

 竜が共通語で話しかけてきた、頭に響く声だ。ていうか、共通語話せるのかこいつ。

『少し話をしようじゃないか、人間、貴様の左前方に平らな場所があるだろう、そこに降りよ』

 指示通り、左前方に見えた山脈の中腹の平らになっている場所に車を下ろして停める。竜種の命令に従わなかったら確実に命はない。

『さて、人間。何の目的でこの山を越える?』

 竜が車のすぐそばに降りてくる。でかい、高さはゆうに五十クロンはあるだろう。

「僕は、世界の果てを目指して旅をしているんです。この世界は僕たち人の間では世界に果てなどなく、無限に大地が伸び続けていると言われているので、流石にそんなことはないだろうと、確かめに行くところなんですよ」

『ふむ、世界の果てか面白そうだな。我も同行しようじゃないか』

「え、ついてくるんですか」

『なにか都合でも悪いか?』

「いや、でも」

『はっきり言え』

「付いてきてくれるというのは大変ありがたいのですが、僕はちょくちょく街に戻るためにワープゲート持ってきてて、買い出しとか行っている間、あなたはどうしたらいいのかなと」

 これが僕が絶対に野垂れ死ぬことなく世界の果てを目指せると言った根拠だったのだが、こんなところで困ることになるとは。ふつうに竜種が旅の道連れになるのはとても心強いので歓迎すべきことなんですけどね。

『はぁ、そんなことか、それならこれでどうだ?』

 人の姿になった、しかも全裸の、結構筋肉がある、浅黒い、男の姿だ。

 こうして、僕の世界の果てを目指す旅に、心強いがちょっとどころではなく変わった道連れができたのだった。服はいったん街に戻って買ってきた。

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