第5章 まっすぐな直球をストレートで 第2話 奥藤
恋愛において確かなモノなんて無い。
約束は反故にされるもの。
拘束や束縛は抜け出される為のモチーフ。
ヒトから何かを与えられることを何ひとつ期待してはいけない。
いつからか、そう思っていた。
私の誕生日、クリスマス、バレンタインデー、付き合い始めた日。
奥藤はことあるごとに私に洒落たメッセージカードをくれた。
たくさんのメッセージをくれた。
私は徐々に全身の錆が落とされていくのを感じていた。
奥藤の話には夢やひろがりがあった。
様々な場に赴き、私に刺激を与えてくれた。
年齢など関係なく、とても目線の高い人だった。
その視線の先を共に見ていることで、成長の時が止まってしまっていた私自身も少し動き出せたと思う。
私に出来ることといったら並べて揃える事くらいで、常に効率を考えて、最速最短、最小の手数、一言で済ませる、といったドライなものしかなかった。
奥藤はそれに色や香りや音を与えてくれた。
、、、、、、、、、、、、、、、
私が34歳になり、奥藤が26歳になった。
私と奥藤は5年ほど付き合って別れた。
理由は、5年の間に私が他の女性に手を出したことなどではなく、奥藤が海外で新たなチャレンジをする為だ。
本音で話そう。
所帯を持ちたいなんてチープな私の思想で、奥藤の目線を下げさせたくなかった。
これまで奥藤の事を日本にとどめ過ぎたくらいだ。
海外に行く奥藤をつなぎとめる為に入籍して、何年も日本からサポートすることも考えてはみたが、それが出来るほど私は若くなかった。
私が奥藤に対して感じている感情は【同志】だ。
私が歳を理由に遠ざけてしまっていた夢を見続けている奥藤のことを純粋に尊敬していた。
是非、大成などしなくても良いから好きな事を好きなようにやって悔いなく過ごして欲しい。
、、、、、、、、、、、、、
、、、、、、、、、
、、、、、、
、、、
はぁ、、、、。
これでまた1人か。
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