第2話 熱望

瞬きして、眼を開けた瞬間に全てが変わっていていてくれたらいいのに。


朝起きた瞬間に全てが闇に飲まれてしまっていたらいいのに。


ある時、突然に意識が遠のいて、眼前に真っ白な世界が広がってくれたらいいのに。


ふと振り向くと、背後に広がる世界は嘘だったと思わせてくれるような事が起きたらいいのに。


今までのしがらみが、

これまでの生きてきた証が、

今死んではいない事実が、

ここが現実なんだという事が、

無くなってしまえばいいのに。


誰か言ってくれないか、

今は現実では無いと。

誰か教えてくれないか、

今は幻想を見ているのだと。

誰か助けてくれないか、

今は束の間の世界なんだと。


体が消え去って、泡のようにいなくなって。

魂が破裂して、一瞬にしてこまかくなって。


そこに居たと証明する物が、空間が、記憶が、

黒い穴に吸い込まれたように

無くなってしまえばいいのに。


自分自身がいなくなってしまえばいいのに。

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