第1話 夜

 夜。特に殆どの人が寝静まる時間だと思う。僕は、この時間に起きていることが好きだ。寝ている人が見ていない夜空の星を見ることができる、雲と月の動きを目に映すことができる、寝耳に聞いている様々な音色をしっかりと聴くことができる。

 優越感とか特別になった気持ちに近いけど、それとは少し違うような。同じ様な。

 僕の感覚はフワフワと浮き、僕はゆっくりと夜を待つ。何を待つのかは、分からない。

 でも、こんな夜は過ごすじゃなくて、僕の感覚では、待つという感覚が相応しい。そう思う。ゆっくりと気ままに待つ。何も待たないからこそ、好きだ。なにを待っているかなんて、心地の良い時には、どうでも良くなる。

 誰かが寝息を立てて、夢の中を歩いている時、僕は、夜空を歩いている。春だって、夏だって、秋だって、冬だって。どの夜だって。僕は、好きだ。特に、好きな夜を選ぶとしたら。夏と冬。この二つの夜は、それぞれ違いが激しくて、とても楽しい。

 そう思うのには、様々な理由があるかもしれない。

 両親の夜型人間は、きっちりと僕にも受け継がれている。だからこそ、夜が好きなのかもしれない。

 普段の生活の中で感じる、騒がしい全てが、一度くらいは止まってくれているからかもしれない。だからこそ、夜が好きなのかもしれない。

 月の光が、部屋をやんわりと明るくしてくれる中で、これを書けるからかもしれない。

 とにかく、僕は夜が好きだ。今までも、これからも、ずっと好きだと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る