霊能都市の戦女神

石川鞣

プロローグ

――生きた人間には必ず守護霊が憑いている。


この説がある一人の神父によって全世界に広められてから、もう30年も経つ。その説によると、守護霊は過去にこの世界に生きた人物で、大昔の英雄からどこにでもいるような中年おやじまで様々らしい。そしてこれまでにこの世界に生まれ、この世界に生き、この世界から去っていった者の数を考えれば、後者のような者が守護霊として憑いていることが大多数、誰もがその名を知っている偉人を守護霊に持つことはごく稀である。


彼は言った。


守護霊の力は、その者の生前、死後の知名度に比例する。現代まで語り継がれるほどの偉人であれば、その力は絶大である。その主もまた絶大なる力を手にし、後世まで語り継がれるほどの偉業を成し遂げることだろう。


と。


しかし、この世界には霊が視える者は少なく、自身の守護霊の正体も知らないまま生涯を終える者が大半であった。そこで神父は、自ら市民の守護霊を鑑定し、有能な守護霊を持つ者を集め、守護霊に関する知識と力の使い方を学ばせるための学術都市を創設した。結果、そこは守護霊により大いなる力を手にした者、「霊能者」が集う世界有数の大都市となった。人はこの地を



「霊能都市」



と呼ぶ。

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