気づいたらゲーム開発サークルのオーナーだった

たんげ

第1話 全ての始まり

※こちらはその昔「無料ゲーム.com」さんの方に寄稿したコラムです。分かりにくかった部分を読みやすくした他、いくつか加筆してみました。


【はじめに】


 自分が「趣味のゲーム開発」つまり「同人ソフト」に関わり始めたのは、ごく最近の話です。まさに「ほんの数年前から」でしかありません。この世界について何ら知識もないまま現在に至ります。いまだに自分には分からない事だらけの世界です。


 かつて仕事として、企業でゲーム開発に従事していた事はあります。ですが、だから趣味のゲーム開発がスムーズに完遂できるかと言えば、決してそうではありません。そのあたりについて、面白おかしく書き記してみたい。そんな衝動から、この文章を書き起こしています。


 先に明言させて頂きたいのは、「趣味のゲーム開発は楽しい」という事です。大変な部分もありますが、それ以上に楽しい事が沢山あるからこそ、自分はこの活動を続ける事が出来ます。決してネガティブな面を誇張する為にこの文章を書いているワケではありません。ですから、もし読んでいて暗い気持ちになってしまった人がいたら申し訳ないと思いますし、私の本意ではありません。


 自分は今も、仲間たちと楽しく「趣味のゲーム開発」を続けていて、それが「楽しんでいる」事の証明であると自負しています。趣味の開発に対して全く無知だった人間が人を集め、最終的にはフリーゲームをリリースするまでの話。自分の記憶が許す限りに思い出して書かせて頂きます。



【当時の自分について】


 正直に言ってしまうと、当時の自分は「フリーゲーム」や「同人ゲーム」という物について、完全に無関心な人間でした。あえてそういったモノに目を向けなくても、世の中には多数のゲームが存在します。言うなれば「知るキッカケ自体が全くない」という状態でした。


 なのに今では、なぜか「ゆるいゲーム開発部」という零細サークルの代表を任されております。いわゆる「同人ゲーム開発サークル」です。そこで仲間に恵まれ、今までにいくつかのゲームをリリースする事が出来ました。


 今にして思えば、これは非常に幸運な事なのです。サークル発足当時の状況から現在までを思い返した時に思うのは、大袈裟に言えば「奇跡的だった」という事です。リアルに想像してみると明らかなのですが、仕事外での開発について完全に無知・無関心だった自分の様なサルがサークルの代表者となって、数年間に渡る規模の開発を維持・完遂した事。それは本来、ありえないとさえ思うのです。


 では、どの様な経緯があって現在に至るのか? これは言い換えれば、


 同人ゲームの開発について何も知らないサルが、

 どんなキッカケで開発に携わり、どの様な手段で

 リリースまでこぎ着けたのか?


 という話に他なりません。自分の経験をこの場に書いてみる。そして、それを読んでくれた人が「こんなサルでも出来るなら、自分にも……!」なんて思って貰えたら嬉しいです。昔から、なぜだかゲーム開発関係の話は「大変だ」という面がクローズアップされるイメージがあるのですが、実際には楽しい事も沢山あるし、それを知って欲しい気持ちもあります。


 でもまあ、なんでしょう。アレですね。

 確かに、大変な面もあります……(゚ε゚;



【全ての始まり】


 当時の自分は、仕事が終わった後……つまり「夜中の時間」を持て余していました。無料のネットゲームをチョコチョコ遊ぶ程度で、他にする事もありません。まさに純然たる暇人、ダメな大人。そんな状態でした。


 その頃に一緒に遊んでいた「あすか」さん(現在の「ゆるいゲーム開発部」サブオーナー)とは、もはや気心の知れた仲でした。その日も普段の様に、あすかさんとネットゲームをして遊んでいた最中の話です。


 あすか「そういえば、ゲームプログラマだったんだよね? 作るのって難しいの?」


 たしかに自分は仕事上、ゲーム開発に携わっていました。とはいえ、そんな漠然とした質問をされても困ります。「モノによるっしょ?」としか答え様がありません。何とも唐突な話をするものだと思ったのですが、あすかさんは何やら熱心な様子です。それで自分も、少し真面目に話を聞いてみる事にしました。


 あすか「簡単に絵がパラパラ出るだけでいいんだけど……」

 丹下「ああ、そういう紙芝居的なヤツなら簡単だよね」

 あすか「そっか、頼りになるな~! よろしくよ」


 え? なにが?(゚ε゚ )


 何が「よろしくよ」なのか、どうしてそういう事になったのか、これは今でも理解出来ない部分があります……。気が付けば、何やらゲームの開発を頼まれた形になっている?らしい感じです。とはいえ、まさかビジネス外でゲームを作るというのは、当時の自分は想像した事さえありませんでした。


 なのですが。当時、自分が暇だった事。それに加えて「もしかして自分、頼られてる!?」的な気分の良さがあったのも事実です。それゆえ、つい軽い気持ちで引き受けてしまいました。なに、絵がパラパラ出る程度のプログラムなら大した作業も発生しないでしょう。


 そんな風に考えていた時期が、俺にもありました。


 当時の自分は、明らかに作業を軽く見積もっていたのです。なおかつ「たかが趣味の開発か。俺はプロだった人間だぜ?」という気持ちから、増長していたと思います。それが大きな間違いだったのです。経験者であれば即座に分かる事ですが、趣味の開発といえども「絵がパラパラ出るだけ」で開発が終わるはずもありませんので。


 とはいえ、まさかその日から実に「1年を越えるプロジェクト」になっていくとは、誰が想像出来たでしょうか……。


【気軽な一言が】


 さて、自分もインチキくさいとはいえ、今回の話では一応「プログラマ」として頼られている事になります。なので最初に、あすかさんにはヒアリングを実施しました。何をどうしたいのか?大袈裟に言えば「要求仕様」を固める為の、簡単な聞き取りです。


 あすかさんは「絵が表示されて、クリックしたら次の絵になればいいだけ」と言います。なるほど、処理としての要求レベルは非常に低いです。いや、むしろそれはゲームではなく「スライドショー」に他ならないと思いました。ですが当事者がそれでOKと言うのだから、自分には何の異論もありません。


 むしろ楽でイイネ(^ε^ )


 世の中には、優秀かつ無料のスクリプトエンジンが多数存在しています。ゆえに今回の依頼について、自分が「何かを作る」必要はありません。そう判断して、メジャーなスクリプトエンジンが紹介されているアドレスをあすかさんに伝えました。熱意あるクリエイターよ、グッドラック。じゃ、サヨナラだ。陰ながら応援するよ。


 ……と思いきや、数日後。


 あすかさんから「何もかも全然わからない」と連絡を貰いました。不思議に思って話を聞くと、あすかさん達の集まりは完全に「グラフィッカのみで構成されている」という話だったのです。そして誰ひとりとして、スクリプトエンジンには興味が無く、絵やシナリオに専念したいという事でした。


 いや、そんな事を俺に言われても……(゚ε゚;


 そう思ったのが自分の本音です。それならば普通に諦めればいいだけではないのでしょうか。どう考えてもそのグループは、ゲームを作るにはバランスが悪すぎるのです。とはいえ、乗りかかった船。「ならば!」という事で、自分もつい色気を出してしまいました。


 丹下「なら、メモ帳で記述可能な簡易スクリプタでも作ろうか?」

 あすか「ふーん、よく分からないけどヨロシクよ」


 気軽に言いやがって(^ε^ )


 そう思ったものの、所詮は数時間で作れそうなプログラムです。そして何より、あすかさんは気のいいヤツだし、その程度の作業ならと快く引き受ける事にしました。で、ついでに「ゲームらしく企画をツメて考えた方が盛り上がるよ」と伝えたのです。


 そうです、自分もあすかさんと同じだったと思います。「気軽」にそう口にしたワケですから……。それが呼び水になったのでしょうか。そこから一気に話が大きくなっていくのです。

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