最終話 アングレカムの花
身体が軽い。
まるで全身が羽のよう。
これが死ぬってことかしら。とても温かい。
植木鉢頭の彼ったらまだ泣いているのね。
お花は咲いてるみたいだけど、困ったわ。私は死んでしまったから彼の呪いを解いてあげられない。
残念ながら、膜のようなものが張ってるみたいに彼の言葉はくぐもっていて聞こえない。
もっと早く私が行動していれば、彼は呪いから解放して幸せになれたかもしれないとぼんやりと思う。
けれど、もう私は人間であった時間が終わったからなのか不思議と後悔はない。
目を閉じて横たわる自分の姿と、遠くてよくわからないけど綺麗な淡い緑の花を頭に咲かせ身体を折り曲げで泣いているであろう彼を、少し高い位置から見下ろしながらとりとめもないことを考えていた。
「私は…私は…呪いなんて解けなくていい…。この醜い姿で生き続けてもかまわないから…アンともっと一緒の時を過ごしたい…」
植木鉢頭の彼の絶叫に近い声が急に聞こえたかと思うと、私を包んでいた膜のようなものの感覚が消え、私は光に包まれた。
次の瞬間、私は彼の目の前にいた。
表情がわかりにくい彼だけど、それでもはっきりとわかりくらい彼は驚きの表情を浮かべていた。
私も急なことで驚いたけど、彼はもっと驚いたに違いない。
「こんにちは、素敵な植木鉢頭さん」
初めて出会ったときに言った言葉が口から出ていた。
「私と…呪われたままのこの醜い姿の私とこれからも一緒にいてくれるのか?」
子供みたいに泣きじゃくりながら彼は言った。
それがとても愛しくて、一緒にいたいと思ってくれていたことも踊りだしたいくらいにうれしくて、私は思わず彼を抱きしめる。
「どうしてそんなことを聞くの?あなたのその姿がとても素敵だったから私はあなたを好きになったのよ」
私は、彼の頭に咲いた淡緑の可愛らしい花を摘んでそう答えた。
その花は生まれ変わった私の髪色と同じ色だった。
そして、彼の頭に咲いた花を見て驚く。
「あなたに咲いているお花、私の名前と同じだわ。
アングレカムの花が咲くなんて…本当に御伽噺みたいな結末ね」
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