クレイジー・ファイブ・ストーリーズ
三叉霧流
物語墓守・ストーリー・アンダー・テイカーⅠ
0の狭間
「おや、おやおやおや。こんなところにお客人―――おっとこれは失礼致しました。これでは何も見えませんな」
―――パチン。
「どうですか? 何もないところでしょう? あるのは老いぼれた鷲鼻の爺と本五冊。いや、ついでに私の服もありますかな。この漆黒のタキシード。五億年前の仕立てにございます」
「ふむ。お客人は無口でいらっしゃる。まぁこのような場所にいらっしゃる方ともなれば、それは偏屈でいらっしゃいますね、カカカカカカカ」
「オッホン。つい、口が出すぎましたな、申し訳ございません。何せ四万年ぶりのお客人ですから私も少し舞い上がっているようです。ここはひとつジョークで―――」
「あ、いらないですか。ふむ。私のジョークを聞きに来ていないとなれば…ああなるほど。お客人は自分の人生に飽きたのでございますな。退屈、無気力、絶望、怠惰。まぁ花のない人生で退屈するのもよくわかります。何せ私は46億年は怠惰に身を燻らせておりますからな、カカカカカカカ」
「ご託はいい? これは失礼しました。ですが、こんな物語の墓場にいらしても得るものはないでございますよ? やはりここは私のジョーク―――」
「なるほど。私のジョークよりもこの本が気になると? それはお目が高い! 何せこれまで誰も読んだことのない本ですから。きっと吃驚するほど面白くないでございますよ!」
「ふむ。それでも見たいと…。やはりお客人は変わっておられる。まぁ私も持っているだけで読んだこともないですがね。タイトルだけは承知しております。
「やはり…興味を持たれてしまいましたか。ふむ。確かに聞こえはよろしいですが、私のような物語の墓守が手にするような話。しかるに、これらの物語は救いもなく、面白くもなく、ただ奇妙奇天烈なお話なだけでございますが…」
「はぁ…そうでございますか。それほど見たいと。時間の無駄かとは存じますが…畏まりました。まずは一冊。それを読み、このくだらなく、奇妙で救いのない話をご賞味いただき、次の本を読むかどうかのご判断をくださいませ。そうですなぁ最初なら飛びっ切り胸糞の悪い奴からいきましょうか」
「そうでございます。タイトルからしてあれですが『
「では、『
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