撮影会
なんだか全体的に消化不良に終わったポチ子さんの一件でしたが、まあ仕方がありません。
面倒事のフラグが成立している気がしないでもありませんが、それについては実際にコトが起こってから考えましょう。
「デカイッ!」
「ナイス! ナイスバルクだよリコちゃん!」
あれから一旦お屋敷に戻った我々ですが、せっかくの休日を終えるには時間的にも中途半端な感がありました。いえ、私に関しては元々学校の夏休み期間中に再召喚されたので、休日も何もないのですが。
「いいよ、キレてる!」
「こっちにポーズお願い!」
そこで帰宅した私は、ミアちゃんやクロエさんと一緒に、今回はこの世界に持ってこれたスマートフォンを使って遊ぶことにしました。
そうは言っても、スマホのメイン機能である電話やネット関係、通信を必要とするゲームアプリなどは使用不可能ですから、もっぱらカメラや動画の撮影ばかりですが。
「ははは、二人とも、焦っても筋肉は逃げませんよ」
……で、最初のうちは普通に風景や人を撮っていたのですが、いつの間にか魔法を使っての筋肉撮影会になっていました。
いつだかネットで見かけたことのあるボディビルの画像を思い出しつつ、様々なポージングを取って互いにそれを撮影し合っているのです。衣装も謎の伸縮素材で出来たビキニ的なナニカに着替えているので、存分に筋肉の美しさを堪能できる……らしいです。
ぶっちゃけ私にはよく分からない世界なのですが、ミアちゃんやクロエさん、お仕事中に通りかかったメイドのオバチャン方まで大盛り上がりなので、止めるに止められなくなっているのが実情。
やはり、この世界の……と言い切るにはまだまだ見聞が不足していますが、少なくとも私が知るこの世界の人々は独特の美意識を持っているようです。
スマホに馴染みがない人々、特にクロエさんあたりに撮影を任せるのは不安もあったのですが、意外にもすぐに使い方を覚えていました。私が教えたのは基本の撮影機能だけなのですが、いつのまにかズームやら動画機能やらの使い方も覚えていたほどです。
もちろん彼女達に日本語は読めないのですが、野生的な勘の良さに加え、初心者でも感覚的に操作できるような国産メーカーの技術力の賜物でしょう。
「あはは、このカメラ? っていうの面白いね!」
「いいなぁ、わたしも欲しいかも」
随分と気に入ったようですが、流石に自分用のスマホをプレゼントするのは抵抗があります。
ですが、もし日本に帰った後でまたこちらに来ることがあれば、その時は安いデジカメでも用意しておくのもいいかもしれませんね。ソーラーか手回し式の充電器もセットにすれば、こちらでも使えるでしょうし。
まあ、帰る手段や召喚する方法についてはある程度の目途が立っているものの、不確定要素が多いのがネックです。今回スマホや充電器を持ってこれたのは、前回の経験からの用心もあったとはいえかなりのラッキーでした。せめて、いつ、どこで召喚されるかが分かっていれば諸々の準備も出来るのですが。
「おっと、もう充電が少ないですね。今日のところは次の一枚で終わりにしておきましょう」
メモリーカードのデータ容量にはまだ余裕がありましたが、すごい勢いでパシャパシャ撮っていたので、いつの間にやら充電が残り10%を切っていました。
私以外はまだまだ遊び足りなさそうでしたが、こればかりは仕方ありません。また夜のうちに手回し充電を頑張っておくとしましょう。
「じゃあ、最後は三人で一緒に……『
魔力切れで身体が萎んでいた二人も私の魔法で再び膨らみ、三人並んでサイドチェスト。胸板の厚みを強調するというポーズを取って、メイドのオバチャンに頼んでそのまま撮影してもらいました。
「せっかくですし、待ち受けにでもしますかね」
直接だろうと画面越しであろうと雑コラ感が半端ない、キレキレのボディビルダーの顔部分だけを私達と取り替えたような奇妙な姿ですが、それゆえに日本にスマホを持ち帰ったところでまさか本物だとは思われないでしょうしね。
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