フィエロ王国戦記
にぽっくめいきんぐ
「イケメン勇者」という概念
城にやってきた、イケメン勇者やら何やらについて語りたいんだが。いい? じゃあ始めるよ?
「よくぞ来た、勇者よ!」
謁見の間で、お決まりの言葉をかけてやったのね。
目の前の青年は、赤絨毯の上に片膝をついて頭を下げ、指揮者がミディアムテンポのワルツで三角を2つ作った位の間を置いて、シュッと頭を戻して立ち上がり、こう返してきた。
「すみません、私はただの村人ですが?」
知ってます。こちとら、王だぜ王。国のな。
「健全な肉体と、勇気さえあれば、それで良いのだ。資格もいらない」
「勇気があるかなんて、自分ではわかりませんが」
……面倒なやつが来やがったなあ。
「招集に応じここに来ている時点で、十分に勇気があるのだよ。普通は面倒がって、居留守でも使うものだ」
「そういうものですか。で、ご用件は何でしょうか、王様?」
状況を、かいつまんで説明してやった。
この世界に、突如魔物が発生し、各国が大混乱に陥っていること。
それらを倒すため、国中から勇者を募っていること、等々。
青年は、うんうんとうなずきながら、私の話に耳を傾けたね。で、
「具体的には、どのような魔物なのですか?」
はいきたー! 説明めんどうー!
「どのような、とは?」
「力が強いとか、空を飛ぶとか、色や大きさや形状とか皮膚の硬さとか、数や発生分布など、様々です。これらによって、我々の対処方法も変わりますよね?」
た、確かにそうだけど、魔物は発生したばかりだし、情報ねーよ。実働部隊のお前が何とかしてくれよ。
「具体的にはまだわからん。魔物が発生したという情報が、先日もたらされたばかりなのだ」
「不確定情報に基づいて行動するのは危険ですよね?」
「我が国の情報部が、同盟国から公式に得た情報だ。問題ない」
「そのお話ですと、同盟国へ旅立つことも、想定されますよね?」
「無論だ」
「とすると、私には語学力がありません。それでも大丈夫ですか?」
「我が国の基本的な教育を受けているだろう? それには、外国語も含まれていたはずだ」
「ええ、都合12年程。『ほこらはどちらですか?』とか『これは剣ですか? いいえ、宝珠です』程度は使えますが、それでまともに会話できるとは思えません」
「12年も学んだならば、読み書きくらいはできるだろう? 筆談で話せば良いのだ。大抵の宿屋で記帳セットが販売されている。あと、剣と宝珠は見間違えないから安心するように」
「わかりました。要は、現地に飛び込んで覚えろ、ということですね?」
「まあ、そういうことになるな」
ふう。納得してくれたか。
しかし青年は、やや慎重な、こちらを伺うような面持ちになって聞いてきた。
「失礼ですが、報酬はどうなるのでしょうか?」
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