第350話三年生たち
ただ僕はそれ以上そこには突っ込まずに
「なるほどね。じゃあ哲也や瑞穂なんかはどうなん?」
と聞き直した。
一年生同様ピアノ以外の三年生はどうなっているのかも気になっていた。
彼ら二人もピアノではないがコンクールのファイナリストでそれぞれ賞を獲得している。彼らだってあこがれの先輩だろう?
「ああ、それはそれで一緒にやりたい二年生沢山おんで」
と当然のように悠一は言った。
「やっぱりそうかぁ……」
なんとなくは予想はしていたが、その通りだった。一緒に演奏するのはピアノだけではかった。何故か少し安心した。
「今の三年生って皆経験者で入部しとうから、結構上手いやん。大ちゃん先輩なんか俺から見ても上手いと思うもん。それなりに
とヴァイオリンの三年生の谷川大二郎のあだ名を挙げた。
そう、大二郎に限らず今の三年生達は僕と同じように二年生で入部してきた。そしてその全てが経験者だった。それなりの経験と腕は持ち合わせていた。
しかしだ。悠一のいう事は一々ごもっともだが、彼のセリフがどうしても上から目線の様な気がしてならない。
兎に角、少し考えればわかることだが、二年生の夏からこんな器楽部の様な部活を始めようと考える奴なんか、経験者か受験を諦めて悟りの境地に入った奴ぐらいしかいない。
そう、そんな中途半端な時期に初めて弦楽器に触れた……なんていうレベルでは、やっと少しまとも弾けるようになった頃には受験シーズンに突入だ。
進学校の我が校では三年生の夏あたりから受験シーズンに突入する。しかしそれはあくまでも部活をしている生徒だ。部活に入っていない生徒はもっと前から受験体制に突入している。
そんな状況ではあるが僕の同級生たちはそれなりに経験があるので、割と気楽に何も考えずに入部したのではないかと思っている。
ただ経験者である彼ら彼女らに一つ誤算があったとすれば、それは彼ら彼女たちがこの部活に完全にはまってしまったという事だ。
我が部は前部長の千龍さんが言ったように緩い部活の割にはレベルが高いので、元々演奏が好きだった彼ら彼女たち現三年生が、それなりのレベルの演奏者がいる部活にどっぷりとはまってしまわない訳がなかった。合奏は楽しいのだ。
そもそも千龍さんたちがそのパターンで卒業間際まで居座っていた。
そして大二郎なんかは全くその典型的なパターンにはまった愚か者だった。
大二郎はコンクールとか全く興味も関係もないが、悠一の言う通りこの部活を始めてから彼のヴァイオリンの音色は変わった。彼は瑞穂と琴葉に感化されて一気に腕を上げた。
「という事は三年生は?」
と僕が聞くと
「全員二年生と一緒に組んで
と悠一は当たり前のように言った。
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