其の四 ソラカゲ抹殺指令

「一体何なんだ…緊急招集が掛かるなんて…」


とある建物の会議室…馬面宇宙人『U・マズラー』が不満そうに疑問をぶつける。身体には銀の甲冑を纏っている。


「それが…大規模な地球人の反乱があったらしいのですわ…」


猿型宇宙人『エンキッキ』が答える。

彼は漆黒のボンネットを被りゴスロリドレスを纏っている。

こんな格好をしているが彼はれっきとした男性…俗に言う『オネエ』であった。

彼も宇宙人特有の偏った趣向なのだろう。


「何だ…そんなの今に始まった事じゃないだろう」


犬型宇宙人『バウワン』が呆れたように言い放つ。

真っ赤なベレー帽をかぶり筋骨隆々の身体、タンクトップに迷彩ズボンと言ったいでたちだ。


「話によると相手はたった一人で50からの兵隊を皆殺しにしたらしい…怪しげな体術や兵器を使っていたと聞く…しかもその者はあのミノタンを殺したと…」


鳥型宇宙人『チキボン』がオドオドと報告。


「何だと!!我ら『12人委員会』のメンバーがやられたと言うのか?」


隻眼でマッチョ体型の虎型宇宙人『トライガー』は驚きを隠せない。

袖を無理やり引きちぎった軍服調のベストを着ている。


「いや…今では『11人委員会』とでも言うべきか…」


蛇型宇宙人『ジャジャ』が空気を読まない発言をする。


「こんな時に不謹慎ですぞ!!」


猪型宇宙人『イノシン』が憤慨する。


「ミノタンてさ~腕力しか取り柄が無かったわよね~

自惚うぬぼれて現場にしゃしゃり出たりするからやられるのよ」


兎型宇宙人女性『ラビィ』がマニキュアを付けながらあきれ顔で言い放つ。

スタイルの良い身体を強調する様なタイトなミニスカートの女性用スーツを着用している。


「女に何が分かる!!戦場こそ男の生きる場所だ!!ミノタンへの侮辱は許さんぞ!!」


大柄なドラゴン型宇宙人『牙炎』がラビィに抗議した。

今は折りたたんでいるが背中から翼が生えており、紅と銀で彩られた特注の鎧と兜を纏っている。


「まあ…皆さんそう興奮なさらずに…味方同士でいがみ合っている時ではありませんよ?」


「「「「…委員長…!!失礼しました」」」」


一同の中で一際小柄な鼠型宇宙人が制すと一斉に謝罪が飛び交い

やがて会議室は静寂に包まれる。

巨躯で強靭なトライガーや牙炎ですら緊張のあまり体が硬直していた。


『委員長』と呼ばれたこの鼠こそ何を隠そう『12人委員会』のトップ

『ジェリーマン』であった。

ビシッと糊のきいたビジネススーツ姿である。


「まずはこの映像を見てください…」


ジェリーマンが手元のリモコンを操作して壁面のモニターに映像を映し出す。


「…何だこれは…」


会議場内が騒めく…

モニターに映し出された映像は死屍累々の地獄絵図であった。


「これは昨日、旧ホッカイドウ東エリアの地球人居住区の映像です

我ら12人委員会のミノタン率いる50人の兵士と敵対した何者かが交戦を行った事後の物ですね…

そしてこの人物が犯人です」


ジェリーマンは更に映像を切り替える。

そこにはソラカゲの姿がはっきりと映し出されていた。


「こいつがミノタンを…」


トライガーがグルル…と唸る


「ほ~!!まるで旧地球のニッポンに伝わる『特撮ヒーロー』ですわね!!

それも『ニンジャ』モチーフの!!」


エンキッキが感嘆の声を上げる。


「詳しいじゃないですかエンキッキ殿」


「私は旧地球の…特にニッポンのサブカルチャーが大好きなんですのよ」


ジャジャの質問に喜々として答えるエンキッキ。


「それで…こいつの対処はどうするの?委員長様」


机に両肘を付き組んだ指の上に顎を乗せジェリーマンを見つめるラビィ。


「ちゃんと手を打っていますよ…旧ホッカイドウ西エリア担当のラムゥさん?」


『…はい、お呼びでしょうか委員長…』


モニター一面にくるんと巻かさった角にフカフカな体毛の宇宙人がアップで映し出された。

羊型宇宙人のラムゥである。


「あなたにはこの犯人の処分をお任せしますよ、捕まえられれば一番良いのですが無理なら殺してしまっても構いませんから」


『はい…お任せください…』


ラムゥは深々とお辞儀をするとモニターの映像も途切れた。


「…そうか、ラムゥが会議場に居ないと思っていたが特命を受けるためだったか…」


バウワンが呟く。


「ラムゥはここに来ていなかったのか?…済まぬ…気が付かなかった…」


牙炎も額を押さえて思わず苦笑い。


「でもあいつ…居ても存在感ないけどね~」


ラビィが肩をすくめた。


「「「全くだ!!」」」


会場内に嘲笑が起った。


「それはさておき…最近地球人レジスタンスの動きも活発になって来ていますし…反乱の芽は小さい内に摘み取るに限りますからね…」


ジェリーマンはニヤッと口角を上げた。

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