エンキョリ

@noanoa_zum

プロローグ 

 なんというか、この世の中は面白い。何故なら同じようなことが何度も繰り返されるような感覚を覚えるからだ。これから俺が語るのはほんのちょっと背伸びしたかわいい少女と、ほんのちょっぴり幼心を持った青年の、本来許されざる話だ。

 俺は何回同じことを繰り返せばよいのだろう。

 俺は何度同じ失敗をおかすのだろう。

 俺はどうしていつもこうなるのだろう。

 そんな君たちも一度は考えたことがあるような、周りにとっては何でもない、だが本人にとってはある種人生の悩みのタネのような、そんな恋愛に関してのある種癖のような、特性というか、困ったモノに振り回されるそんな俺の、ちょっとさみしい、そして甘酸っぱい物語。

 出会ったこともないような二人が、運命とも言えるような美しい恋愛をして、運命ともとれるような悲しい恋愛をした物語。

 さぁ少し話させてくれ。

 では、少しの間お付き合いいただければと思う。

 自分のものと思ったその先に、きっと君たちはエンキョリの儚さと夢のような時間を、俺と一緒に体験するだろう。


 俺は女が大っ嫌いだ。そんなことを言うと女性の方から罵詈雑言が飛んできそうではあるが、まあ聞いてほしい。その思いの根源は高校生活時代にさかのぼる。

 俺が高校生で、彼女が中学生。昔っから年下にしか興味がないというか、年下にしかそそられることのなかった俺が初めて人生で付き合ったのは青春真っ只中の夢の世代であった。クリスマスの日に告白をした。雪がちらつきながら彼女の頬を撫でる、そんな冬の出来事だ。同じ塾の後輩という立場から、可愛く小っちゃい彼女になった時、初めての彼女のその頬には一筋の涙と、顔には天にも昇ったかのようなうれしそうな顔があった。中学生と高校生の初々しいカップルは一年後、記念日のクリスマスに彼女から別れを告げられる形でその付き合いの幕を下ろした。今回のお話はそちらがメインではないのであまり詳しくは話さないが彼女が言った「もう疲れた」という一言は、彼女にその一年間を捧げた俺の心を葬り去るのには十分だった。何に疲れたのかも教えてもらえなかった16歳の俺は、ただただ相手を恨んだものだった。

 今となっては彼女の気持ちも大いにわかるような心の余裕ができた。とはいえ、俺の心の中に女性に対しての恐怖心というか、身構えてしまうものを植え付けたのは言うまでもない。

 さて、16歳の幼心にして女性への恐怖を覚えてしまったこの少年はなんと高校生活の大半を男友達と過ごすこととしたわけだが、その話も今回のメインの話ではない。そんなこんなで高校3年間を過ごし切り、大学へと進学した青年は新しい友人もでき、自分のやりたいことをできる大学へと進学をし、充実した日々を送ることになる。その中で俺はSNSに大いにはまった。高校生で内輪に閉じこもっていた俺にとって、趣味の合うやつらと顔を合わせずに好きなだけ話せる場というのは素晴らしいと感じる物であったのだ。そのなかで生放送もやった。絵を描いたり、雑談したり、女性とも文章を通して話すことから始まり、音声通話ソフトで通話もしたりした。確実に壁はあったものの、少しは女性に対して耐性を持ち始めていたのだ。

 そんな中で、ある一人の女の子と出会った。彼女も生放送を行う側の人間であったが、お互いの放送を見たり聞いたり、コラボしたりして仲良くなっていった。これが今回のお話の俺とは別のもう一人の登場人物、恵子である。

 さて、長々と説明口調で話させてもらったが、とどのつまりこの物語は俺と恵子とのお話、という事になる。そこで皆さんには恵子と出会うほんのちょっと前の俺と同じ視点にまずは立ってもらおうと思う。そこからすべてが始まっていくのだから…

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