280703 身体と心のどちらが寂しがっているのか、私には分からない(エッチの発展編)
身体と心のどちらが寂しがっているのか、私には分からない(エッチの発展編)
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村山由佳「ダブル・ファンタジー」(下巻)より引用
いま、(登場人物)に逢えないでいるのを寂しく思うこの気持ちが、はたして心から発したものなのか、身体(※)から発したものなのかが、(主人公)には分からない。その二つを完全に分けて考えることは難しい。もしも身体だけでいいのなら、(言葉もSEXも上手い人)との逢瀬をあれほど無闇に欲しがらずに済んでいたはずだし、逆に身体だけでかまわないのなら、いつか読んだあの出張ホストとでさえ時々会ってうまくやる程度のことは出来ていたかもしれない。
※身体はすべて、本来は通常変換外の「身と區」を組み合せた漢字を使用。意味はどちらも「からだ」のこと。
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(※この記事には引き続き男女の性的なやり取りに関する話題が含まれます。苦手だったり自分にはまだ早いと感じる方は、まわれ右して引き返してください)
さて、エッチを気持ちの別側面から追います。
先日はエッチを描写するなら、空想の中なんだし、身体的興奮も精神的興奮も合致して最高潮に達してカタルシスを得る形で描写しちゃいましょうと書きました。
しかし、実際問題、そんな風になるものなのでしょうか。それに対する答えは「過度に期待するな。しかし侮るな」としか言えないと思います。
エッチまで書くロマンス小説では、せっかくなので盛り上げて「愛する本当の相手と結ばれたエッチは最高のものである」と描くでしょう。
現実ではそうとは限りません。ベストセラーに『気持ちのいいセックスの本』が並ぶことがあるように、相手のエッチが技巧的だとは限りませんし、自分好みの順序・主導権のリード(優劣関係)・雰囲気・丹念さであるとも限りません。
また、自分の体が性的行為に敏感に反応するかというと、そうでもないこともあります。加齢による衰えや、惰性による性欲の薄れもあるでしょう。
しかし、信頼のできる相手とやっと結ばれたわけです。エッチだけが関係の全てではありません。なので、大抵は多少の不満は抱きつつも、そのままの交際を続けるかと思います。
(そもそもその不満は致命的ではないでしょう。恋人同士なら尊重し合うはずですし、よほど乱暴でぞんざいな扱いをしない限りは、お互いにある程度は気持ちよくなれるはずです)
そもそも精神的に信頼して身を預けるから、体も安心して柔らかに相手を受け入れるわけです。「気乗りしない」というのはそのままの意味で、精神的なコンディションも大幅にエッチの満足度に影響します。
ですから、そこに落とし穴があるわけです。条件反射のパブロフの犬のお話も思い浮かべて下さい。
逆に言えば、一夜限りでも気持ちいいエッチができてしまうと、相手のことを実は好きなんじゃないかと、精神が肉体に引きずられてしまうことがあるのです。
人の心は気持ちよくなる方に動きます。つまり、体の関係を気持ち良くするために、精神も相手を受け入れるように順応するのです。
逆も
最初が少しのヒビであっても、その方向が芽生えると粗探しを始めてしまい、そのまま破局に向かうこともあるでしょう。
人間は精神も肉体もある生き物なので、どちらかの状態に足を引っ張られることがあります。
心理描写の丁寧なスポーツ漫画にも同じような例が見られ、精神的なコンディションに身体的能力・成果がしばしば左右されます(こちらもフィクションほどでないにせよ、現実的に当てはまることだと思います)。
エッチとて同様です。もっと大雑把にいえば、風邪引いて熱出せば気分だって落ち込むわけです。
しかし、この変調に自覚的な人間は少ないでしょう。自覚しても、後戻りできないくらい気持ちが進んでしまっていることもあるでしょう。
だから、そのときは一時と思っても浮気は恐ろしいのです。体だけでなく心まで持って行かれかねません。
そりゃあ気分良くエッチしたいわけで、浮気相手はカラダだけでなく「
それが信頼できるかはその相手次第でしょうが、思った以上に体と心は繋がっているので、君子危うきに近寄らずが賢明です。
その胸の高鳴り、吊り橋効果かもしれませんよ?
ドロドロした内容を綴ってきましたが、こういう三角関係を扱う小説って結構多いです。男女の間にある普遍的な課題ですからね。
個々人としても浮気や破局に大きな衝撃を受けた人も多いでしょうし、それを小説として仕上げたがるのも分かります。これこそ文章にして客体化して整理しないと、踏ん切りが付けづらい部類のエピソードですしね。
まぁこんな感じで、体と心の繋がりについても考察しておいた方が、作品の幅は広がることでしょう。
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