第19話 特別な日に向けて
12月24日と言えば、言わずもがな特別な1日だ。
それは冬季休暇に入って久しいその時分、きっと去年の彼女ならすでに実家に帰っていたかもしれない。
24日と言うのがかなりのポイントになる。
否が応でも意識をしてしまうその日にどうして限定をして誘ってしまったのかは自分でもわからなかった。だが、彼女は「うん、行く。どこ行こうか」と微笑んでいたからもはや問題はない。
当日までに色々と考えてしまう私は先々の予定を立てる事が苦手だった。しかし、彼女と顔を合わせる度、あれやこれやと24日の予定を立てる作業はとても楽しかった。共通の目標があるとこんなにも2人だけの世界に入り浸れるのかと正直に驚いた。
それでも、彼女のゼミでクリスマスパーティをすると小耳に挟むとたちまち不安になって、彼女に確認をした。
すると「行くわけないでしょ。もう断ったし」淡泊に彼女が言ったので安心した。
12月に入り、町も人もクリスマスを意識し始める頃、私達は、まだどこに出掛けるのかを決めかねていた。
私は、水族館やUSJなどの安易な所謂デートスポットを提示し、彼女はどうせなら、少し遠出をしたいと考えていたようだった。
どうせなら、お互いに納得をした場所に行きたい。そう思う私は彼女の意見を尊重をしたが、だからと言って自分の意見も譲り切れず、もっと他の所を……と言う落としどころで話が毎回やんわりと流れてしまっていたのだった。
彼女は24日が近づいても、あっけらかんとしていたが、対照的に私は焦っていた。
遊びに行ったその夜の事を考えていたからである。
結局、21日の夜彼女からのメールで行き場所があっけなく決まった。神話好きな彼女であれば1度は訪れてみたいと思う場所であった。だから、彼女の希望を叶えることにした。
それからが大変だった。クリスマスディナーを予約しなければならなかったからだ。
時間・予算・場所、最低限の条件を満たすところは軒並み、予約で埋まっており、残っているのは手の出ない高価なディナーか深夜帯のディナーばかりで、加えてそこに料理の種類を加えるとほぼ、絶望的だった。
ディナーは彼女には内緒にしていた。
クリスマスに2人で出かけるのであれば、自己満足にもエスコートをしたい。これは私の私だけの希望であり我儘だったのだ。
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