第2話
九月二十二日の夜。俺、白井裕紀のスマホがあの曲を奏でた。
声優・呉羽みゆきのデビュー曲、「Lovely♡Heart」。
デビュー曲といっても、端役のキャラクターソング。
だけど……。
それでも、応援している声優の初CDだからと予約をしてまで買った、思い入れの深い曲だ。
あくまで俺の私見だけど、彼女は歌がうまいほうではない。下手でもないけど。
でも、声優なのだから。
演技を応援しているんだ。
そう自分に言い聞かせつつも、やっぱりファンとしては、初のCD、初のグッズの発売ということで、つい手が商品に伸びてしまう。
これから始まる、いやいや、もう始まっているであろう呉羽みゆきの快進撃、そのファーストストーリーを、自分も彼女と一緒に歩いている。それは、ファンにとっての無上の喜びに他ならない。
スマホからその着信音が流れたということは、すなわち、彼女のブログが更新されたサインだった。
二週間とちょっと前に風邪をひいたということで、筆まめな彼女のブログは更新されなくなっていた。
しかたがないなぁ、と思いつつも全快を願いつつ、新たなメッセージを待っていた。
また、あの柔らかだけど芯の強い声を、すぐに聴けるようになる、それは疑わなかった。
心臓は更なる高鳴りを覚える。紫のカバーのスマホ、そのアイコンに震えながらタッチする。
「えっ、……マジ」
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