遠くの風―—定めの歌と花―—【朝東風シリーズ一作目】

登月才媛(ノボリツキ サキ)

第一章 疑い

出会い

第0話 プロローグ

 オリジナル棒人間、それはオリ棒作者の心に生まれた代弁者。

美しい容姿を愛でるのも、人形遊びの様に他作者のオリ棒と触れ合わせるも作者の自由。

さて、この世界ではオリ棒が感情を持って生活を営んでいる様だ。


まるで、紙に描かれたまま呼吸をし始めたかのように!


プロローグ

 森に小鳥の鳴き声が響く。遠くから足音がそっと近づいてくる。

そして、藪から顔を出した。鳥の合唱が突然絶える。


周囲を警戒しながら一歩一歩と確かな歩みを谷へと進める、

足音の主は白い狼のような生物だった。


すっと通った鼻筋に、青と紫の羽の鳥をくわえている。


白くとがった耳、双房の銀に艶めく尻尾は、高貴の証。


部族は多々あるものの、この種の毛並みは世界で一番だ。

この種はフォーレンと呼ばれていた。


この高貴な種が、野山を駆けいつもより少し多く

獲物を狩ろうとするのには、理由があった。


枯れた川を越え、険しい崖を滑り降り、けもの道を駆け、

棒人間が塩の採掘の為に掘った洞穴へと入っていく。


ここはあらゆる棒人間の匂いで充満している。


村を追われて、避難民となった村人たちは、人を助ける役目を担った

フォーレン達には、お荷物の様なものだった。


邪魔されるのは気に食わないというように、

足早に、最奥部のフォーレンの族長の部屋に入る。


族長に会釈し、鼻先に青い鳥を置く。


族長の温かい目が、獲物をそっと置く、若いフォーレンを見つめた。

「私がこの鳥を食べ終わったらまた来なさい」


尻尾を一振りし、立ち去る若いフォーレン。


族長はその背を眺め、体を起こし、

「シルバ……」とその名を、

息子の名を呼ぶように呟いた。


 側仕えが退室するとともに、シルバという若いフォーレンは下座へつく。

上座にいる年老いたフォーレンが

族長、ハーゼン王だ。威厳を感じさせる、

ゆったりとした語り方でこういった。

「そう長くは喋らない、しかしお前には、かしこまったままなのは窮屈だろう、

 楽な体勢で良い」


シルバは尻尾を振りつつ、腰を上げて再び座りなおした。


「お前が、気付いていないとは思わない。私の命は残り少ない。

 私が死ぬその前に、お前に試練を与えたい。

 私の友は先の炎の襲撃に没し、骨の行方も分からない。

 友が私に託したものは、世界を救うための一つのシナリオに過ぎないが、

 我が部族、種さえも揺るがせる、大きな役割である。

 ついては今後、お前にはすべての種をまとめる努力をしてもらう……

 お前を信頼していないわけではない、信じているからこそ、いま、命賭魔法を行使する。

 ……

 ……今、語ったすべては、太陽の契約の下で、

 来る日までの盟約とする、来る日によみがえる記憶の為に……

 <forget>フォアゲット。」


シルバは強い眠気に襲われた。

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