異層世界決戦 ―蛟竜一閃―
俺の手に持つ「霊剣
―――問題は俺が作り間違えたっちゅーことやねんなー……。
こうやって蛟竜を握って立ってるだけでも、俺の霊気は蛟竜に吸いとられ続ける。
霊気が無くなったら、その時点で俺の敗けや。
つまり……。
―――霊気が底付く前に、ケリつけなアカンっちゅーこっちゃ!
俺は蛟竜を正眼に構えて黒鬼を見据えると、力の抜けた手と足を叱咤した!
俺の雰囲気が変わった事に、黒鬼も警戒心を露に構えをとる。
恐らく霊器による攻撃は、奴の方が慣れてる。
何を仕掛けてくるか解らん事を考えると、こっちが攻め続けるしかない!
「タッちゃん……」
「……不知火……龍彦……」
ビャクと
「いや―――っ!!」
―――速い!
自分で言ーのもなんやけど、この動きはかなりの速さや!
黒鬼もこれには度肝を抜かれた様で、回避の動きが間に合ってない!
そして、俺自身もその動きについて行けてない!
―――ちょ、待て! 速すぎるやろ―――!!
―――ドカンッ!
結局俺は蛟竜を振り切る事も出来んと、黒鬼に正面衝突する羽目になってもーた……。
いやだって、
俺に全力でぶつかられた黒鬼は、構えることも備えることも出来んかったみたいで、すごい勢いで後方に飛ばされて、またまた違う民家に突っ込んで行った!
……いや、威力は大したもんやけど……。
「……タッちゃん?」
「……」
俺の行動に全くの意味を見出だせへんかったビャクと蓬が、キョトンとした表情で此方を見てた。
「いたたた……」
なんぼ地脈に
ん? ちょー待てよ?
(なー、ばあちゃん。地脈の力って無限に近いんやったっけ?)
確か以前の話ではそんな事言ーてた気がした。
(そやで―――。地脈の力は尽きることがないんやで―――)
(じゃー地脈に接続してる俺の霊気が尽きかけてるって……どういう事なん?)
地脈から力を借りてるんやから、無限の霊気を供給されるんちゃうんか?
(あんな―――供給する量より使う量が多かったら―――供給が追い付かんやろ―――?)
……スミマセン。使いすぎって事ですね……。
確かに地脈から強大な霊気を受け取って力を使うことが出来るし、その力は尽きることがない。
けど瞬間的に大量の霊気を使えば、一時的に枯渇状態になる。単純な理屈や。
けど、さっきの突進で俺の霊気は一気に無くなってもーた……。
すでに立ってるのもやっとや……。
(……悪ぃ、ばあちゃん。なんか俺、失敗ばっかりでなんかアカンみたいやわ……)
奴が瓦礫の中から這い出てくる。
やっぱり通常の打撃では決定打にはならんみたいや。
あの分厚い筋肉質の体は伊達やないっちゅーこっちゃ。
何回も吹っ飛ばされて、奴の顔には怒気がこれまでにないっちゅーくらい浮かんでる。
(龍彦―――あんたはほんまにしゃーない子やな―――。今回だけはあんたに力を貸したるわ―――)
(……ばあちゃん? 貸したるって……何言ーてんねん?)
(龍彦―――瞬間的に霊気が回復するから―――一気に
そう言ーたばあちゃんから、何か力を込める気配が伝わってきた。
それも、尋常やない力の入れ方や!
次の瞬間!
俺に失われてた力が戻った!
いや、無くなった霊気が、一気に回復したんか!?
(こ……これって……!?)
(それは不知火の地脈から出てる霊気やで―――! 長く開けてられへんから―――すぐに決めや―――!)
珍しいばあちゃんの、力が篭った切羽詰まってる声!
ばあちゃんが無理してるんか!?
(すまん、ばあちゃん! ありがとう!)
俺の正面に戻ってきた黒鬼と、俺は再び相対した!
「人喫の黒鬼! こうする事が合ってるんかどーか解らんけど、お前には
逆恨みかもしれんけど、今の俺には十分過ぎる理由や!
それに今まで奴がしてきた事は、人間として許されへん!
……ついでに勝人の事もな。
腹の底から力と霊力を込めて俺は叫んだ!
言葉は言霊になって、俺の決意が伝わってる筈や!
「だまれ小僧! ここにいる者全員血祭りにして、蓬は連れて帰る!」
俺の言葉に奴も答えた!
俺は再び正眼に構えをとって、奴との間合いを測る!
今度はさっきみたいなヘマはせーへん!
俺の手に余る速度はいらん!
今は少しでも奴より素早く動ければ良ーねん!
高まる俺の集中力!
渦巻く奴との緊張感!
俺と奴との間には、俺の霊気と奴の殺気を取り込んだ濃密な空気が流れ込む!
―――怒声も奇声も、ただ発する声すらなく、
―――まるで申し合わせたように、二つの影が同時に動く。
―――巨大な黒棍棒が振り上げられ、
―――霊剣蛟竜が、残光を残し降り下ろされた。
―――二つの影は互いをすり抜け、
―――先程までの立ち位置を代えて、背中合わせに残心を取っていた。
―――片方の影が、グラリと揺れる。
―――もう片方の影が振り替えると同時に、揺らめいた影は、まるでスローモーションのように崩れ去った。
蛟竜を構えから解いて、倒れた黒鬼を見つめた俺の心には、勝った高揚感も達成感もなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます