白き夜に夢みる12月のこと-2
「え、まじで?」
「ああ、まじだ。」
「本気か?」
「ああ、本気だ。」
「だって、あの翠だぞ?俺たち4人の中で1番鋭いんだ…。」
「どんな人間でも全てにおいて鋭いわけじゃないだろ。翠も、少なくとも俺の知る限りでは青真のことに関しては鈍いぜ、すごくな。」
「え…どういうことだよ。」
…あぁ、分かっちまった。こいつらは周りの人間の協力も甲斐がないほど鈍いんだ。双方のことについて、限定で。今まで何も関係が変わらないのも頷ける。しかも、2人とも例え俺らが何か言ったとしても、きっと信じっこないんだ。やっぱり話させるしかないな。2人で。
「なぁ、もう一度、話してこいよ。翠と2人で。お前このままこうしていても何も変わらないぜ?前言っただろ。青真と翠はちゃんと2人で話してみたほうがいいって。今度はちゃんと、落ち着いて、な。」
青真が何か言いかけた時、店のBGMが「蛍の光」に変わった。まだ18時半だぞ。早すぎるだろ。
諦めて手短に会計を済ませて商店街のアーケードから出ると、冷たい北風が吹き付けてきた。そういえば、幾分か空も重たいものを背負っているような顔をしている。
「なぁ、白斗。」
アーケードを端から端まで来た頃に、青真が俺の方は見ずに口を開いた。
「俺、翠と話して見たほうがいいのか?」
「そりゃあ、そうだろ。」
「そうか…。」
それから青真はしばらく考え込んでいるようだった。俺らは2人でそれぞれ前を向いて歩く。正しくは俯き加減で歩く青真は時々電柱やポールにぶつかりそうになっていた。
家までの道を半分ほど来た頃、ようやく青真が顔を上げた。久しぶりに見るようなはっきりした光を持つ目をしていた。
「白斗、俺話してみるよ。」
「そうか。」
よかった。ようやく動き始めるか。
「じゃあ、善は急げだな!電話してみろよ。」
「え、本気か⁉︎」
「ああ、本気だ。」
「えー……。」
「ほら、かけてみろよ。今しかないと思うぞ。どうせほっといたら先延ばしすんだろ。」
「う、図星…。」
「ほら!」
「…わかったよ。」
青真が電話をかけると3コール目で翠は出たようだ。なかなか話し出せない青真の背中をたたくと、意を決したように話がしたいと切り出した。そこからはなんとか、たどたどしく話が進んでいるようだ。ふと青真が言う(電話越しの翠に、だけどな)。
「ねぇ、雪降り始めたよ。外、見てみなよ。」
言っているのを聞いて空を見上げて初めて気づいた。雪だ。今日のお天気お姉さんは当たったな。
青真に目を戻すと、もう大丈夫そうだった。俺はポンと肩を叩き、頑張れよと小声で言って、その場に青真を残し帰路につく。
少しして振り返ると、小さくなった青真が雪の向こうで嬉しそうに話しているのが見えた。久々に見た様子に、思わず俺の顔もほころんだ。
さて、俺はこのことを紫苑に報告しなきゃだな。携帯を取り出し紫苑の番号を呼び出す。番号を見つめて、俺の電話する相手は野郎かよと苦笑いが出る。
雪で一気に空気が冷たくなった気がする。マフラーを巻き直して紫苑に電話すると、向こうには朱里もいた。温かいやつらだよな。
さぁ、これからどうなるか。いよいよ楽しみになってきた。
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