あかの花咲く7月のこと


「夏だー!」

夏!

やっとうっとおしい雨雲もどっかいっちゃって、真っ青な空に入道雲、セミも元気に鳴き始めて、通学路に咲く花も夏の花に変わってきた。楽しい季節が来た!

紫苑とかは夏は暑くて嫌い、なんていうけど、夏を楽しまないなんて損だよね!


なのに、なんだかあのあたりは夏らしい爽やかな雰囲気じゃない。青真に翠。梅雨時期のテスト前のあの頃からかな、なんだかぎこちない雰囲気を保ち続けてる。



あの時、あたしは紫苑の行動の意味が分かんなくて引きづられるように紫苑の家に着いた。遅れてきた白斗もやって来て、ようやく知ったんだよね、紫苑と白斗の悪巧み。

「あーあ、知ってたらあたしも協力したのに!」

って言ったら

「「朱里はすぐバレるからダメ。」」

って2人口をそろえるんだもん。失礼しちゃうな。


幾ら何でも分かるよ、幼馴染のことくらい。ずっと一緒にいるんだもん。

鈍感だとかマイペース人間だとか、そんな風に言われるあたしだけど、2人のことさえ気づかなかったら幼馴染失格だよね。



「ねぇ、翠!」

あたしは翠に声をかける。

「この間の勉強会楽しかったよね!またお願いします、翠先生!それでさ…。」

「何?朱里。」

「この間のこと、詳しく聞かせてよ。2人、相合傘で帰ってきたんでしょ?ねぇ、どうだった?」

ニヤニヤと表現するのが正しいような笑みを含ませて尋ねたあたしに、翠は不機嫌そうな顔を見せた。


あ、しまった。あちゃあ、まずったかな?

翠の表情を見て一瞬そう思ったけど、そんなにまずくなかったみたい。


「ま、まぁ…ね…。」


ほんのり頬染めて、俯き加減に少し不機嫌そうな顔。翠が照れたのを隠しきれない時にする、やたらと髪を耳にかける仕草。


翠がデレた!


そう思ったけど、声には出さなかった。


これはもう一押しせねば…かな?



「よぉし、翠!海行こう!夏だし!みんなで!ね!」


突然のあたしからの提案にきょとんとする翠を放っておいて、あたしはみんなのところに駆け寄った。


「青真、紫苑、翠とあたしも一緒にみんなで海行こうよ!あ、白斗も行く?」


「なんだよ、そのおまけみたいな言い方!人をないがしろにしやがって…。」とか

「朱里の場合、提案じゃなくてほぼ命令だよな。」とか

「え、暑い…。」とか

文句言ってるやつらもいるけど気にしない!

これは行かねば!



「ふふっ。いつものことじゃない。」

「まぁ、そうだな。たまにはいいよな、こういうのも。」


そういう風に楽しそうに笑ってる2人がいるから…ね!

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