白き雨にうたれる6月のこと-1
「雨だ。」
「雨だね。」
「雨…。」
「雨…ね。」
「雨かぁー。」
梅雨だ。
空はどよんと曇っていて、
俺も青真も紫苑も翠も朱里も
心なしか沈んでいる…なんてことはなかった。
少なくとも俺は内心ニヤニヤしている。
さぁてどうしてやろうか。
何か口実はないものか、そう企んで、いや、考えていた時だった。
「白斗、お前今何か企んでるだろ。」
ふとかけられた声にため息をついた俺は、その声をかけてきた相手を見て、またため息をついた。
「はぁ、全く紫苑にはかなわねぇな。」
「それはお互い様だろう。」
紫苑にはどうやら考えがあるらしい。
任せるとしよう。
「朱里。」
紫苑は朱里を呼んだ。
ん、と腑抜けた返事をする朱里に紫苑はさらに付け加える。
「こんな日は…テスト勉強に限るよな。」
「そうだねぇー。…ってテストもうすぐじゃん!」
「そういうわけだ。俺らは大変まずい。」
「ほんとだよー。どうしよう、紫苑。」
なるほど、紫苑の考えが読めてきた。
つまりはこういうことだな。
「紫苑と朱里にしては珍しいな。自分たちから勉強とか言い出すの、初めてじゃね?」
「そんなことはない。」
「そんなことないもん!」
ハモったな。さすがと言うべきか。
「まぁ、冗談はさておき。お前ら2人じゃ無理だろ。なぁ青真、翠。」
突然話を振られた2人はキョトンとしたのもつかの間、動揺の色が浮かび始める。
そんなことはお構いなしに俺は続ける。
紫苑の筋書きはこれできっと合っている。
「と、いうことでだな!今日は紫苑の家で勉強会だ!頼むぜ、青真先生、翠先生。」
紫苑の家で、というところには紫苑も驚いたらしい。
だが筋書きは間違っていなかったようだ。
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