みどり映える5月のこと-2
「翠ー!疲れたよぉ、やっぱりさっぱりわからない!翠が教えるのが分かりやすいのー!」
廊下を反対側から歩いてきた朱里が嘆きをぶつけてながら駆け寄ってくる。
廊下で大きな声出さないの、と朱里をなだめる私に紫苑までもが突然の言葉を投げかけてきた。
「よし、今日は翠先生のもとで勉強会だな。」と紫苑。
「何を勝手に…。」と言いかけた私の言葉は白斗の声にかき消される。
「おっ。いいじゃん、翠先生。なぁ、青真。」
同意を求められた青真は白斗と軽口を叩き合っている。
白斗は教えてもらう必要ないだろ?
いやいや、俺もまだまだだって。
なんだよ、クラス落ちした俺には嫌みにしか聞こえないぞ。
どうせ青真のことだ、関係ないことでうだうだしてたからじゃねぇの?
ばか白斗、黙れよ。
声が小さくなり内容は聞き取れなくなっても、軽口を叩きあいながら楽しそうにしてるのはその様子を見て明らかだった。
「いいなぁ…。」
つい、つぶやく。
気づくと朱里が顔を覗き込んでいた。
いつの間にか紫苑も後ろから見下ろしている。
「…なによ。」
しまった、少し不機嫌な声になってしまったかも…。
でも、そうでなかったのか気にしてないのか、朱里も紫苑も表情変えずに
「よぉし、翠先生の勉強会決定!」
「よし、翠先生の勉強会決定。」
と声を揃えた。
マイペースは相変わらずね。
仕方ないな…と思い始めた私に追い打ちがかかる。
ほっといてるうちに会話が終わっていたようだ、青真が声をかけてきた。なぜ後ろにぴったりと白斗がいるのかは少々疑問。
「まぁ、あいつらもああ言ってることだし、翠、頼むよ。」
面倒見のいい青真らしいはにかんだ感じの笑み。
「…仕方ないわね。私が教えるからには青真、あなたくらい上のクラスに戻ってきなさいよ?」
結局こうなるのね。
まぁいいかな、今日も一緒に居られるのだから。
予鈴が鳴る。
休み時間のたった10分の出来事。
「次の授業なんだっけ、翠。」
「英語よ、クラス別の。」
「うわっ、やべ。急ぐぞ、翠。」
「はいはい。」
英語は私と青真が上のクラス。
こうしてバタバタしながら2人で教室に向かうのは、そんなに嫌いじゃないのよね。
気持ち前を早歩きする青真のあとに続いて私も歩を進めた。
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