青の空広がる4月のこと-2
「ばかだねー、青真。慣れないことするからだよ!」
今俺は朱里に背中を叩かれている。
「朝からいちゃいちゃするなよ。独り身には目に毒だぜ?」
朝からなぜ去年のクラスメイトにいじられなければならない。
結局、決意したのもつかの間のこと。早起きなんてそう長く続かなかった俺は、相変わらず4人で登校することになる。
俺の隣には今俺の背中を叩いてばかにしてくる朱里。俺の後ろにイヤホンを片耳にしたままの紫苑。紫苑の隣で黙々と歩いてると思えばたまに紫苑に耳打ちしてる翠。
もう少しの我慢だ。そう思って曲がった先、目当ての人間を見つけてほっと胸をなでおろす。
「白斗、おはよう!」
俺の声に「おう」と短く返事を返すのは白斗。俺が最近この4人の中に半ば強引に引き込んだ1人。普通なら居づらいだろうこの環境に黙って入ってくれた貴重なやつ。何より、俺の気持ちをわかってくれるのがすごい。こんなやつ、今まで周りにいなかった。そう思ったら声をかけて、仲間に誘っていた。
「毎朝大変だな。」
そう言う白斗に苦笑いしか返せない。
でも、それよりこの言葉の方がこたえた。
「青真、お前またこんな立ち位置に甘んじてんの?隣に行けばいいだろ。」
その言葉に固まってしまった俺を朱里がつっつく。
また歩き出して俺は白斗に耳打ちする。
「白斗、簡単に言うなよ。出来りゃあもっと早くにそうしてるって。それに…。」
途中で口をつぐんでしまう。そんな俺の服の裾をつかむやつがいた。
「相変わらず大変ね。そんなに色々考えなくてもいいんじゃない?ま、がんばれ。」
翠だった。
俺に声をかけた翠はすぐまた普段通りに歩きだした。言った意味を分かってない朱里が質問攻めしようとしている。紫苑は相変わらず何か音楽を聴いている。
「真っ赤になってないか、俺。大丈夫か?いつも通りかな?」
とっさに隣の白斗に聞く。大丈夫だよ、と返事をもらってやっと落ち着けた。
俺の気持ちをわかってくれるやつ。今でこそ白斗がいてくれるが、白斗だけじゃない。ずっと昔から実は1人だけいてくれた。それが翠だ。それに気づいたのは中学に入ってからだったか。あの時は色々あって落ち込んでるのを知られたくなくて頑張ってた。そんな時、誰もそんなことに気づいてなかったのに、翠だけは違った。
「無理して頑張らなくていいんじゃない?青真は青真でいいと思う。」
そう言ってくれた。我ながら単純だが、それから俺は…。
「おい、もう着くぞ。フリーズすんな、戻ってこい。」
背中に軽い衝撃。声の主は白斗、衝撃の主は紫苑。
「痛ってぇな、言ってくれるだけでいいだろ。」
我に返って紫苑に文句を言う。
門をくぐる前に一言、白斗に声をかけた。
「分かってるよ、こんだけ一緒にいるんだからいかなきゃ何も始まらないことくらい。でもな、単純にやってはいられないんだよ。」
その後の言葉は飲み込んだ。そう、単純ではいられないんだ。翠は、きっとあいつのことが…。
何か言いたそうな顔を白斗がしたように見えた。でも、何も言わないってことは今言わなくてもいいことなんだろう。
朝の挨拶が飛び交う正門をくぐり、俺たちは校舎へと足を進めた。
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