第12話 鏡

普段の私の定位置は、ちょうど部屋の置き鏡の目の前の座椅子になるのだが、その鏡が風鈴を惑わせているようだ。


私がその位置にいるため、膝や肩に乗ってきたときに、鏡に映った自分が見えるらしく、風鈴としてはとても気になるらしいのだ。


風鈴は初めの頃、タブレットの液晶に映った自分を見ても、驚いて後ろに飛び跳ねていた。


最近は時折出会う黒い猫(鏡越しの自分)にも慣れたのか、じっと凝視していることが増えた。


猫と目が合うと、まずは「にゃー」と小さく鳴き、低く構えてから鏡の方に突っ込んんでいく。


もちろん、派手に鏡にぶつかるのだが、それでも諦めずに再度距離をとっては飛びつくのだ。


あまりに気にするので、宥めながら背中を撫でていると、途中で猫が板のようなものの後ろにいるのでは?と考えたのか、今度は鏡の後ろを行ったり来たりと走り始めた。



十五分の格闘の末、疲れ果てて私の膝の上で眠ってしまった。


埃も目ヤニもついたまま眠る風鈴は、このあと待ち受ける三回目の入浴をまだ知らない。

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