第3話 嫌なこと
ふと頭を撫でていると、黄色い物体が風鈴から出てきた。
風鈴は痒そうに顔を掻いている。
慌ててタブレットで黄色い物体の謎を調べるとどうやらノミらしいことがわかった。
きっと生まれてこの方風呂にも入ったことはないし、私も猫を風呂に入れるのは初めてのことだった。
それからは大騒ぎだ。
水の音に驚き、いつもとは跳ばない方向にジャンプをし、あらゆる隙間から逃げようとする。
心の中でごめん、と言いながら、静かにぬるま湯をかけてやる。
体を触っていると怯えてはいるが、徐々に大人しくなり、体を預けてくれた。
あらかた全身を洗ってやったところで、浴室からあげてやると大騒ぎが再開してしまった。
ドライヤーの音を怖がり、私が近づくと後ずさる。
嫌われてしまったかもしれない、という不安だけがあった。
優しくタオルで拭いてやる。
初めこそ逃げてばかりだが、少しずつ挙動が落ち着いてきた。
ゆっくりと毛並みを整えはじめ、「ゴロゴロ」と喉を鳴らす。
少しほっとした。
毛並みが乾く頃には、私の隣ですやすやと寝息を立てていた。
起きたら起きたで、また顔の近くで「にゃーお」と鳴き、いつも通りの時間が帰ってきていた。
ちなみに、あの後風呂場には、正直書きづらいほどの痒みの元凶がいたため、詳細は割愛することとする。
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