第93話 もうひとつの緊急事態宣言
晩ご飯を食べながら
ぼんやり見ていた テレビのニュース
赤いテロップとともに
流れてきたのは 緊急事態解除の宣言
視線は画面にくぎ付けで
手に持つ箸は宙ぶらりん
脳裏に浮かんだ キミの姿
首からエプロンを掛けた
頭の中をキミの言葉が駆け巡る
ボクの心に染み入った 穏やかで優しい言葉
箸をスマホに持ち替えて店のサイトへアクセスすると
NEWが付いた表示は『営業再開』の文字
胸の奥から湧き上がる うれしい気持ちと安堵の気持ち
胸の鼓動が打つ早鐘 やっとキミに会えるから
雨の中
閉店間近のショットバー
タオルと言葉を掛けたのは
三歳年下のアルバイトのキミ
その日のキミはボクの専属
ある意味 その日一番の被害者
でもね すごくうれしかった
キミの笑顔でがんばれる気がした
あれから半年経つけれど
ボクたちは何も変わらない
キミとボクとは店員と客
それ以上でもそれ以下でもない
キミとはたくさん話をした
とても楽しいときを過ごした
でも 肝心なことは話していない
喉まで出掛かった言葉は言えなかった
お店の再開と二人の再会
それは 二つの
一歩踏み出すチャンスかも
距離を縮めるチャンスかも
明日に備えて準備しないと
こんな機会は二度とないから
これは いわゆる緊急事態
ボクの緊急事態宣言
逃げてばかりじゃ進まない
近づかないと伝わらない
明日は違うボクになる
キミのハートに濃厚接触
RAY
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