第108話 トワイライトスノー


 茜色あかねいろの空

 暮れなずむ街

 歩道を流れる人の波


 レンガ色のビル

 壁のカラクリ時計

 いつもの待合せ場所


 PM6:00のデジタル表示

 時間ときを告げる鐘の音

 壁から現れる人形の音楽隊


 響き渡る軽やかな音色

 ネオンサインの華やかな演出

 ずっと変わらない見慣れた光景


 何度目かのため息

 ユラユラ立ち上る白い吐息

 過ぎていく いつもの待合せ時間


 微かに舞い落ちる白い塊

 天気雨ならぬ天気雪

 夕焼に彩られた 幻想的な風景


夕暮れの雪トワイライトスノーはなかなか見られない」

「でも すっごくキレイだからいつか見せてあげたい」

「その中をいっしょに歩けたら最高だよ」


 出会った頃のキミの唐突な一言

 少年みたいな笑顔に胸がキュンとなった

 そんなときが来るのをずっと楽しみにしていた


 トワイライトスノー

 いつか見たいと思っていた景色

 やっと叶った願いごと


 でも 悲しくてたまらない

 涙が止まらない

 思いは叶ったはずなのに


 理由は簡単

 欠けているから

 ――「いっしょに」が


 トワイライトスノー

 舞い落ちる雪はセピア色

 記憶の中で微笑む二人と同じ色



 RAY

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