第28話 曖昧シグナル


 雨のスクランブル交差点

 ヘッドライトに浮かぶ無数のしずく

 歩道からあふれ出しそうな傘の花


 信号が青に変わると人波が一斉に動き出す

 まるでF1レースのスタートみたい

 

 十人十色のベクトル

 秩序があるようでない世界


 歩行者信号はわかりやすい

 青色は「GO」 赤色は「STOP」

 車の信号みたいに黄色がないから


 人の気持ちに喩えるなら

 青色は「スキ」で赤色は「キライ」

 黄色は さしづめ「どちらでもない」


 よく交通事故が起きる黄色のシグナル

 白黒ならぬ赤青がはっきりしないから?

 でも それは「GO」が「STOP」になる過程で必要な色


 人の気持ちに当てはめるなら

 黄色は「スキ」が「キライ」になる過程

 それは さしづめ「曖昧シグナル」


 キミからボクへの言葉の中に

 見え隠れする 曖昧シグナル


 そんなシグナルいらないよ

 優しさの押し売りは


 いっしょにいるのにいっしょじゃないの

 人込みの中で迷子になりそう


 黄色がないはずの歩行者信号

 だけど そこには黄色のシグナル


 近くて遠いふたりの間で

 点滅している 曖昧シグナル



 RAY

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