第10話 転寝スロータイム


夢と現実のはざまで目にした ある景色


大きな木が1本あるだけの広々とした空間

視界をさえぎるものは何もない360度のパノラマ


木にもたれかかるように腰を下ろすボク

目に映るのは 遠くにかすむ山々とソフトクリームみたいな大きな雲


雲は風もないのに少しずつ山の方へと流れて行く

雲の影をぼんやり眺めていたら いつの間にか形が変わっていた


目を離したのは ほんの少しの時間

そんな少しの間に 雲は形を変えていた


人の想いに似ている と思った


人の想いは目には見えない

感じとることはできるけれど実態はわからない

ある瞬間 何の前触れもなく変わってしまう


自分自身の想いも同じ

自分でも気づかないうちに変わっていることがある

でも 気づいていないふりをしているだけなのかもしれない


そんなことを真面目に考えている自分に苦笑した


優しく降り注ぐ暖かい陽ざし 時折頬をなでる心地よい風

サイレントの映画が再生されるみたいに静かに流れる時間


はじめて出合ったはずなのに どこかで見たことがあるような景色

そんな景色が自分の原風景であることを心が欲しているのかもしれない


転寝うたたねをしたのは ほんの数分間

もしかしたら 現実の時間で何年間もその世界にいたのかもしれない


もうしばらくいたら きっとお土産に玉手箱が出てきたのだろう

中からソフトクリームみたいな煙が立ちのぼる玉手箱が



RAY

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